初めてでも結果が出せる見込み客の育成方法
見込み客の育成をこれから始めるためにはコンサルティングが欠かせない、とお話をおうかがいすることがあります。実際には、初めてマーケティングオートメーションを導入して、自力で見込み客の育成をやってしまうお客さまもいらっしゃいます。
見込み客の育成は、自社だけでも十分始めることができます。
育成の対象となるターゲットの見込み客を設定し、戦略を考え、実際に実行して、結果を計測しながら徐々に改善していくだけです。
それでは詳しい見込み客の育成の方法について、初めての方でもわかるようていねいに説明したいと思います。
見込み客の育成の概要
見込み客の育成の基本的なことを最初におさらいしておきましょう。
見込み客育成とは
見込み客育成の主な目的は、自社に関わる営業案件や契約件数を増やすことです。見込み客育成のプロセスにおいて見込み客と接触し、コミュニケーションをとりながら徐々に見込み客の購買意欲を高めます。
見込み客の育成は、リードナーチャリングと呼ぶことが多くあります。
リードナーチャリングの基本的なことは、「リードナーチャリングのはじめてガイド」にまとめました。合わせてごらんくださいませ。
なぜ見込み客の育成が注目されているのか
見込み客育成は以前から企業の課題でしたが、ここ数年大きな注目を集めるようになってきました。見込み客育成が注目を集めている背景には、売り手と買い手の双方に変化にその理由があります。
買い手は、欲しい商品について多くの情報をインターネット経由で入手できるようになりました。くわしい商品情報だけでなく、商品の利用者の体験や感想などの情報にいたるまで入手できるようになっています。買い手としてのリテラシーが高くなりました。
一方で売り手は、商品の優位性の持続期間が短くなっていると感じています。どんなに良い製品を開発しても、利益率が高い市場なら特にすぐに類似した商品が市場に登場し、製品の優位性がなくなってしまいます。
つまりモノが売りにくい時代になってきました。
売り手は、今すぐ買おうとしているお客さまだけでなく、将来のお客さま候補となる見込み客にも接触して購買意欲を高めるための工夫をすることで、より多くの営業機会を見出そうとしています。
このようにして見込み客の育成が必要となってきました。
見込み客育成のプロセスとは
見込み客育成は、事業によって多少変わるものの、おおよそ以下の手順が計画・設計・実行する流れとなります。
見込み客育成の基本的な流れ
1.見込み客育成のターゲット(対象)の設定 2.見込み客育成のフローの設計と実行 3.マーケティング以外の活動(営業活動など)との連携 4.見込み客育成の全体プロセスの見直し
見込み客育成の対象を設定する
見込み客育成では、まずは対象となるターゲットの設定をします。
育成する見込み客のターゲットとは
あらゆるマーケティング活動を同じく、見込み客を育成するときでもターゲットを設定します。
マーケティングでは常識である「ターゲット」について、少しおさらいしてみましょう。マーケティングでは、ねらうべき顧客層を設定することを「ターゲティング」と呼びます。
ターゲティングの詳細は、「ターゲティングとは? 」をご参照ください。
ターゲティングはあなたの見込み客の属性や、購買行動プロセス、興味関心の所在(ニーズ)、などの情報を元に手元の見込み客情報を分類する作業です。
見込み客育成では、上記のような見込み客の属性だけでなく「ある特定のページを閲覧した」「過去にセミナーに参加した」などの行動に基づくターゲティングも有効です。
参考:ペルソナを活用して見込み客を育成してみよう
見込み客の育成をうまくやるには、対象となる見込み客のターゲットの深い理解が欠かせません。その上で役立つツールが「ペルソナ」です。
ペルソナは理想ではあるが架空のターゲット像です。ペルソナを設定することで具体的な見込み客像を思い浮かべることができます。その結果、見込み客の育成フローやコンテンツを簡単かつ深く考えることができるようになります。
ペルソナは見込み客育成そのものではありませんが、ペルソナを設定することで、見込み客育成が簡単にできるだけでなく、見込み客育成の効果を高める効果もあるため、見込み客育成をする上では是非使っていただきたいツールとなります。
その上、育成する見込み客の理想のターゲット像をマーケティング部門内だけでなく、営業部門とも理想の顧客像を共有することができるため、手法の見直しや改善の時にも、社内から一貫した意見をもらうことができます。
ペルソナを作る手順については「誰でもできるペルソナの作り方〜マーケティングの現場で活用できる良質なペルソナを作る手順|カイロスのマーケティングブログ」で紹介しております。合わせてごらんくださいませ。
見込み客育成のシナリオを作る
見込み客育成のターゲットが設定できたら、次に見込み客育成のシナリオやコンテンツについて考えていきましょう。
まず、見込み客育成の2つの主な手法を紹介します。この2つの手法は、ターゲットを設定する段階から異なってきます。
見込み客育成の主な手法
ドリップ型の見込み客育成 エンゲージ型の見込み客育成
ドリップ型の見込み客育成
ドリップ型の見込み客育成は、設定したターゲットリストからある行動を示すリードを抽出することを目的としています。つまり、営業案件に近そうな期待値の高いリードを抽出するための見込み客育成とも言えます。
ドリップ型の見込み客育成は、まさに今、営業案件化しそうな見込み客を探し出すため、キャンペーンの期間としても比較的短くなります。
ドリップ型のリードナーチャリングの代表例として、展示会の来訪者に対してのフォローアップがあります。展示会の来場者に対して、展示会の来場のお礼メールを送るとしましょう。このお礼メールで開封やメール本文内のリンクのクリックをしたリードに対して次のリードナーチャリングメールを送ります。
マーケティングオートメーションを使うと前日にあなたのWebサイトに訪問した見込み客の情報がわかります。この機能を使って、前日にあなたのWebサイトに訪問した見込み客にドリップ型のリードナーチャリングをしているお客さまもいらっしゃいます。
当社では、マーケティングオートメーション「Kairos3」を開発しております。マーケティングオートメーション「Kairos3」の事例では、リードナーチャリングの事例も紹介しています。
エンゲージ型の見込み客育成
一方でエンゲージ型のリードナーチャリングの手法では、ドリップ型のリードナーチャリグの手法と比べると少し長い期間をかけて、見込み客の興味や関心を高めることを目的としています。
BtoBビジネスの場合、購買行動にはある一定の時間がかかります。そのため、まだ購買行動プロセスの初期の段階にいる見込み客に対して、エンゲージ型のリードナーチャリングの手法で情報を提供しながら、お客さまの購買行動プロセスを前に推し進めます。
エンゲージ型のリードナーチャリングの手法では、見込み客の購買行動プロセスをよく考える必要があります。
BtoBビジネスの購買行動プロセスは、ある程度フレームワーク化が可能です。それぞれの購買行動プロセスとその際に提供する情報をマッピングします。詳しくは「5分で覚える購買行動プロセスの解説〜BtoB営業・マーケティング担当者なら必ず覚えるべき基本事項」をごらんください。
エンゲージ型の見込み客育成
エンゲージ型の見込み客育成では、購買行動プロセスの各段階を意識して、それぞれに最適な情報やコンテンツを提供することで、見込み客の購買行動を次の段階に推し進めることを目指します。
エンゲージ型の見込み客育成では、メールの開封、ある特定Webページのアクセスなど、見込み客の行動をしっかりと記録する必要があります。メール配信ツールよりも、マーケティングオートメーションがエンゲージ型の見込み客育成では適しています。
マーケティングオートメーションにはデジタルマーケティングで必要は機能が1つのパッケージになったクラウド型のサービスです。ある見込み客のWeb訪問履歴を知ることができます。くわしくは「たった5分で理解するマーケティングオートメーション」をご覧ください。
見込み客育成のシナリオを作る
いよいよ見込み客育成のシナリオ設計について説明します。
見込み客育成のシナリオを設計するには、育成する見込み客のターゲット、それぞれの見込み客との接点で提供する情報(コンテンツ)、見込み客と接触するタイミング、見込み客育成の中で次のステップに進むための見込み客の条件(フロー)について考えます。
見込み客育成のシナリオ設計で考えるポイント
育成する見込み客(ターゲット) 見込み客との接点(タイミング) 接点で提供する情報(コンテンツ) 次に進むための条件(フロー)
見込み客育成における接触頻度を決める
見込み客育成で見込み客に接触するタイミングは、見込み客の購買行動プロセスに大きく依存します。
購入の検討に3か月から半年近くかかるような商材の場合、見込み客育成のシナリオが2週間程度のプロセスではクロージングに至る確率は少なくなります。見込み客にとって不要なメールを次々に送ってしまうと、見込み客があなたのメールを不要なメールとみなして配信停止依頼をしてしまうことがありますので注意が必要です。
購買行動の各段階における社内情報共有や検討はどれくらいの期間が必要でしょうか?この答えが見込み客に接触するタイミングのヒントになります。
見込み客の購買行動プロセスの基本については、担当者なら確実に覚えておきたいところです。詳しくは「5分で覚える購買行動プロセスの解説〜BtoB営業・マーケティング担当者なら必ず覚えるべき基本事項」にまとめてあります。是非活用くださいませ。
見込み客の購買行動プロセスによっては、例えば半年近く検討に要する商材などならリードナーチャリングを複数に分けるのも1つの手です。
リードナーチャリングはメールだけでなく、戦略的にテレマーケティングによる接触、アンケート、セミナーへのご招待などのオフラインのマーケティング活動を加えるのもよいでしょう。
見込み客育成ためのコンテンツ検討する
見込み客育成で提供する情報を決めるためには、育成する見込み客のターゲットによって明確になるニーズと、購買行動プロセスの段階に応じた必要となる情報の違いによって、決まります。
まだまだ情報収集中の購買行動プロセスの段階にある見込み客に対して、製品やサービスの詳細の資料を送っても、ターゲットの反応はあまり良くないでしょう。むしろ強引な売り込みと判断して、オプトアウトしてすることもあります。
コンテンツがなかなか定まらない場合には、改めてターゲットを絞り込んでみましょう。ターゲットを絞り込むとニーズが明確になるため、見込み客育成のコンテンツが作りやすくなります。
見込み客育成のコンテンツを検討する手法のポイントは、次の見込み客育成のフローと、このコンテンツを密接に関係させる点です。
コンテンツは、物語的に順に提供していくものや、徐々に詳細な情報を提供意思ながら見込み客の反応を見る方法など、さまざまな手法があります。
BtoBマーケティングの場合、コンテンツは、自社のWebサイト、自社セミナーの資料など、加工すれば使えるものが社内にあるでしょう。これらのコンテンツを再利用することを検討すれば、比較的スムーズに見込み客育成ができるようになります。法人取引を提供している会社には社内にいろいろなノウハウが散在しています。
これから見込み客育成を始めてみよう、という場合には、フローより先に再利用できるコンテンツを探すほうが簡単だと思っています。そのためコンテンツをフローよりも先に考えることをおすすめいたします。
見込み客育成の条件分岐(フロー)を考える手法
見込み客育成のフローについて考えます。見込み客育成のフローは、最初は非常にシンプルかつ小さなものから始めることがポイントです。
マーケティングオートメーションを導入するといろいろな機能が使えるので、あなたの見込み客育成に対して反応の有無によってフローを切り替えるなど、ついつい全方位的に考えたくなります。
見込み客のしなりをはできるだけシンプルにしましょう。最初から複雑なシナリオを考えても、細かい枝葉のシナリオに該当する見込み客が少なくデータが少ないためPDCAのプロセスを回すことはほとんど不可能になるからです。
見込み客育成で反応のあるリードに着目するアプローチは、フローを組む難易度にも影響します。反応がある場合、行動とその結果に反映があるためフローの改善が容易です。一方で、反応が無いリードは何も情報が無いため手探りで仮説検証を繰り返しながらシナリオを改善しなくてはなりません。
見込み客育成のフローは、見込み客の反応、営業案件の結果などの情報から、徐々にフローを加えていきます。結果やデータなどの事実に基づいて戦略的にフローを作り込んでいきましょう。
極端に言ってしまえば、まずは単発のメール配信にとどめておくことも見込み客育成のポイントです。
リードナーチャリングのフローは、まずはシンプルに。そして結果をみながら1つずつ改善すること。地道な作業ですが、これが見込み客育成には重要です。
見込み客育成のスコアリングの手法
見込み客育成における次のステップは、スコアリングを組み合せて、今すぐ営業活動すべき見込み客を探しだす工夫をしていくことです。
見込み客育成におけるスコアリングの概要
見込み客育成におけるスコアリングとは、見込み客の行動を目に見える数値で評価し、顧客リストの中で営業引合いになりやすい順にランキングするアプローチを指します。
マーケティングオートメーションや見込み客育成では、スコアリングを組み合わせて使うことがあります。
スコアリングについてもっと詳しく学びたい場合には、「スコアリングを始める前にしっかり理解しておくべきスコアリングの基礎」が役立ちます。あわせてごらんください。
見込み客育成の中でスコアリングを使うと、商談になりやすい見込み客を見つけることができるだけでなく、見込み客育成そのものの評価に便利です。
営業活動を効率化する見込み客育成とは
リードナーチャリングである一定以上のスコアを獲得した見込み客に営業アプローチする前に、その見込み客の行動履歴を確認してみましょう。
マーケティングオートメーションを使うと、このように画面上で見込み客の行動履歴が確認できます。
見込み客の行動履歴には、見込み客が語らないニーズや情報があります。
例えば、製品の仕様をよく見ている場合は、その見込み客は自分がやりたいことが明確になっており、あなたの製品がそれを実現できるかどうかを知りたがっています。このような場合には、技術や製品仕様に詳しい担当者が連絡したほうが良いでしょう。
事例や利用例を多く見ている見込み客は、解決しなくてはならない課題は認識しているものの、その解決方法を模索している可能性があります。この場合は提案型のアプローチが便利です。あらかじめ資料を準備して、見込み客に接触してみるとよいかもしれません。
見込み客育成のフローを見直す
見込み客育成でも、他のどのマーケティング活動でも、効果検証が欠かせません。効果を検証し続けることであなたの見込み客育成がどんどん良くなります。
小さくはじめて少しずつ変更を加える戦略的アプローチ
前述の通り、見込み客育成を実施するためには、まずはシンプルに始めてみることをおすすめします。そして、徐々に見込み客育成のプロセスに変更を加えていきます。
見込み客育成のフローの見直しでは、送信するあるメールの件名を変えたり、本文を変更したりするなど、これらいずれの1つを1回の変更で試してみます。
計測できること、効果がわかること、この2つは見込み客育成のフローを設計・改善する上で非常に重要です。
スコアの加点を微調整する
見込み客育成のフローの中で、ある接触においてメール開封した見込み客は成約につながりやすいなどの情報を得ることができれば、そのアクションに大きなスコア加点を設定します。
また、あまり影響のないアクションのスコアは低く設定しましょう。このようにすると、メールの開封のスコア加点は低めにおさえて、リンク本文内のクリックに大きな加点を設定するようになるでしょう。
見込み客育成を自動化する
最終的に見込み客育成のフローが固まってきたら、マーケティングオートメーションなどを活用して、プロセス全体を完全自動化してしましょう。
見込み客育成において、面倒な設定作業がなくなるため、業務効率が格段にアップします。
少ないメンバーでも、効果の高い見込み客育成ができるようになります。
さいごに
見込み客育成は、壮大なフローを描くことから始まりまるため、知識や経験が十分にあるスタッフやコンサルタントが必要である、という見込み客育成に関する認識は既に過去のものかもしれません。
最近では、マーケティングオートメーションやリードナーチャリングのツールが、比較的安価に使えるため、自社でこれらのツールを導入して、少しずつ試行錯誤しながら試してみる企業も増えています。
見込み客育成は小さくシンプルにはじめて、結果をみながら徐々に変更を加えていくべきです。これは見込み客育成の手法の基本となります。
(2015年10月26日に書かれたものを再編集しました)