マーケティングオートメーション選定の勘所〜よくある勘違いを避けるために
マーケティングオートメーションって○○なんだよね。という話を耳にすることがあります。同意できるものもあれば、実際とは少し違うかもしれない、と思うこともあります。
マーケティングオートメーションは急速な勢いで発展を続けています。少し前の情報は、今のマーケティングオートメーションには当てはまらないこともあるのです。まさに「今の」マーケティングオートメーションをしっかりと理解しておかないと、マーケティングオートメーションの選定や導入時がスムーズに進みません。
今回は、マーケティングオートメーションの選定や導入時にチェックするポイントや、マーケティングオートメーションに関する誤解・誤認などについて解説していきます。
みなさまのご参考になれば幸いです。
1.マーケティングオートメーションのシナリオに関すること
マーケティングオートメーションの機能に、ターゲットのみ込み客を自動抽出し、その後の関連するフォローアップを実施することがあります。
この機能はシナリオと呼びます。マーケティングオートメーションの特徴のひとつですが、シナリオにこだわりすぎると、マーケティングオートメーションを十分に活用できなくなることがあります。
1-1.完全なシナリオがなければマーケティングオートメーションは十分に活用できない
マーケティングオートメーションでは、購買につながりそうな見込み客をフォローアップするためのシナリオを設計し、設計したシナリオをマーケティングオートメーションが実行します。
マーケティングオートメーションのシナリオ機能とその自動化はとても便利な機能です。
マーケティングオートメーションのシナリオが非常に便利なため、マーケティングオートメーション導入時から、必要以上に複雑なシナリオを作成してしまうケースがあります。
マーケティングオートメーションのシナリオは、見込み客の購買行動プロセスに合わせて最適に接触するためのマーケティングの業務フローであるべきです。したがって、まず「最適な」シナリオを準備することから始めます。
最適にシナリオを設計するためには、その業務フローを評価しなくてはなりません。それには、実際にマーケティングオートメーションを使って、対象となる見込み客の反応を知る必要があります。
マーケティングオートメーションを導入して最初からシナリオを複雑にしてしまうと、いくつかのデメリットがあります。
マーケティングオートメーションのシナリオを最初から複雑にするデメリット
マーケティングオートメーションを使いはじめるまでに時間がかかる 各シナリオの条件に合致する見込み客が少なくなるため十分な効果検証ができない(もしくは時間がかかる) 最初はシナリオ検証のためのデータが無いため、シナリオ設計は担当者の勘と経験(と趣味や動機)が全てとなる
シナリオのそれぞれのケースに2,3件のみ込み客しか該当しない場合があります。2,3件だけでは、統計的にみて、その評価はできません。
マーケティングオートメーションの導入時には、まずは簡単なシナリオからはじめましょう。
そして、得た結果を分析します。マーケティングオートメーション導入時のシナリオは、メールの開封者やメール本文内のリンククリック者のみをマーケティングオートメーションのシナリオでフォローする程度で十分です。
マーケティングオートメーションのシナリオの概要と、マーケティングオートメーションのシナリオ設計のやり方は「マーケティングオートメーションの失敗しないシナリオ設計の始め方」にまとめてございます。ご興味のある方は合わせてごらんいただけますと幸いです。
1-2.自社にコンテンツが無いためマーケティングオートメーションを導入できない
マーケティングオートメーションの利用と自社で用意できるコンテンツの量にはたしかに相関があります。より多くのコンテンツがあれば、マーケティングオートメーションの活用の幅が広がります。
しかしマーケティングオートメーションの導入当初から、たくさんのコンテンツは必要ありません。マーケティングオートメーションの導入時には、シンプルなシナリオからはじめるべきです。シンプルなシナリオであれば、コンテンツはそんなに必要がないからです。数個のコンテンツがあれば、マーケティングオートメーションでシンプルなシナリオを始めることができるでしょう。
マーケティングオートメーション導入当初のシンプルなシナリオを実行するためには、メール本文用のコンテンツ、製品やサービス紹介のためのWebサイト、資料請求や問合せのためのフォームだけで十分です。メール配信を中心にしてマーケティングオートメーションを活用します。
マーケティングオートメーションで活用できそうなメールコンテンツの代表例については「メールを活用したマーケティングの6つの基本形」が参考になります。あわせてごらんください。
マーケティングオートメーションで設計したシナリオを評価し、まずは利用したメール本文や件名などのコンテンツの手直しを行います。マーケティングオートメーションの効果検証のための分析の結果、コンテンツが不十分であるとわかった時点で、メールのコンテンツや、Webページを追加してからの方を作業が効率化できるはずです。
Webページの作成のための予算が取れない場合には、メールとダウンロード用のPDFを増やしても良いでしょう。パワーポイントやワードでていねいに作成した資料なら、十分にダウンロードする価値があります。
BtoBビジネスの場合、自社にその業界における十分なノウハウを持っています。社内の専門家にヒヤリングするなど、自社内にコンテンツのネタは十分にあるはずです。マーケティング担当者は、自社内のノウハウや知見をできるかぎり資料にして、ダウンロードできるPDFなどの形にまとめてみましょう。
このようにすれば、自社にあまりコンテンツが無くてもマーケティングオートメーションで十分な効果を得ることができるでしょう。
1-3.マーケティングオートメーションのシナリオ分岐は全方位で考えるべき
マーケティングオートメーションの導入ではシナリオを複雑に考えがちです。1通のメール送信後のフローでも、メール開封、リンククリック、未開封など場合分けして、それぞれのシナリオを設計したくなるでしょう。
マーケティングオートメーションで、上記のように3つの場合分けをしたシナリオを設計すれば、たちまちあなたのシナリオは複雑化します。
マーケティングオートメーションのシナリオでは、まずはメールの開封・リンクのクリックだけに着目しましょう。メール本文内でクリックしたURL別のシナリオもできるだけ避けるようにします。
見込み客には複数のニーズがあり、そのニーズを明らかにするためにメール本文内にいくつものリンクを埋め込むことは、あまりお勧めできません。メール本文のテーマがぼんやりし、その結果、ターゲットの読者の興味を引く強いキャッチコピーをメールの件名に設定できなくなります。
メールの件名は、受信者があなたのメールを開封するかどうかを左右非常に重要な要素です。メール件名はコツをつかめば誰でも工夫が可能です。詳細は「開封してもらえるメールの件名の法則〜担当者が知っておきたい今すぐ使える3つの方法|カイロスのマーケティングブログ」にまとめました。
まずはシンプルに1つのメールに1つのテーマを設定しましょう。すると、メール本文内の引き込みのためのリンクは1つに絞りこむことができます。これはビジネスにおけるコミュニケーションの基本と言えます。もちろん、マーケティングオートメーションを活用したメールマーケティングにもあてはまります。
コミュニケーションはビジネスにおいて最も重要なツールです。基本的なコミュニケーションの手法についての詳細は「コミュニケーション能力を高めるたったひとつのコツ(ビジネス編)」が参考になります。
2.マーケティングオートメーションの選び方や使い方
まだまだマーケティングオートメーションに関する情報や経験が十分に広まっているとは言えません。
そのため、マーケティングオートメーションという言葉から抱くイメージによって、うまくマーケティングオートメーションを活用できないこともあります。
2-1.マーケティングオートメーションをマーケティング部門だけで活用している
マーケティングオートメーションは、マーケティング部門の業務効率を良くするだけのツールではありません。
マーケティングオートメーションを活用することによって、営業担当者にもメリットがあります。マーケティング活動によって購買意欲が十分に高くなった見込み客を探し出します。購買意欲が十分に高くなった見込み客は、営業担当者がまさに今すぐ訪問すべき潜在顧客であるからです。
マーケティングオートメーションは、マーケティング活動だけでなく、企業の営業活動にも大きなメリットがあります。そのため、マーケティングオートメーションはマーケティング活動にも、営業活動にも活かすべきです。
マーケティングオートメーションを十分に活かすためには、マーケティングオートメーションのメリットを営業部門にも良く理解してもらわなくてはなりません。
営業部門にとってのマーケティングオートメーションのメリットは、自社の顧客データベースの中で優先して営業活動すべき見込み客を見つけることと、その見込み客の行動履歴からニーズが手に取るようにわかることにあるでしょう。マーケティングオートメーションのメリットについては「たった5分で理解するマーケティングオートメーション」にまとめました。
マーケティングオートメーションを導入したら、高いスコアリングを示すホットリードを営業部門に引き渡すルールを明確に定義しておきましょう。
リードのスコアリングとは、リード(見込み客)の購買に対する準備度合いをランキング化するための手法です。詳しくは「スコアリングを始める前にしっかり理解しておくべきスコアリングの基礎」をご覧いただけると幸いです。
2-2.多機能であるほどマーケティングオートメーションは素晴らしい
マーケティングオートメーションは、例えばメール配信システムなどと比べると使える機能が豊富にあります。
マーケティングオートメーションに機能が豊富にあれば良いのでしょうか?
もちろん同じ利用料金であれば、マーケティングオートメーションには多くの機能があった方が良いでしょう。将来的に使うことがあるかもしれません。
しかし、これまで使っていなかった機能を使おうと思っても、サポート契約が切れているため質問先が無い、もしくは、別途コンサルティング費用が必要な場合もあります。
マーケティングオートメーションの機能に高い費用を払っているのに、実際に使いこなす、もしくは使いはじめることができなければどうしようもありません。サポートが充実しているかどうかも検討項目としておきましょう。営業担当者がいるすぐそばで開発しているソフトウエアは、利用者の声を素早く反応してくれる傾向にあります。
マーケティングオートメーションはその時必要な機能を持っているものを選びましょう。必要になったタイミングで、もっと機能があるマーケティングオートメーションに乗り換えることもできます。
マーケティングオートメーションを比較的シンプルに使いながら成果を得ているお客さまは多くいらっしゃいます。くわしくは「マーケティングオートメーションの導入成功事例」を見ていただくと、その実際をみていただくことができます。
3. 思わず過信しすぎてしまうマーケティングオートメーションのスコアリング機能
スコアリングはマーケティングオートメーションの大きな特徴といえます。しかしスコアリングをあまり頼りすぎてしまうと、本来のマーケティングオートメーションが持つ機能を十分に活用しきれないこともあります。
3-1. スコアリングの対象とする購買行動の期間の設定
マーケティングオートメーションにおけるスコアとは、見込み客の購買行動を数値化したものです。うまくスコアの数値を設定できれば、見込み客の行動を正しく評価できます。
そして、スコアとして算出する見込み客の購買行動には賞味期限があります。つまり、1年前の見込み客の行動は、今の購買意欲とは関連しません。したがってスコアには含めるべきではありません。
マーケティングオートメーションのスコアは、ある特定期間の行動だけに着目して算出します。
見込み客の行動が最近あるほど、今の購買意欲と関連します。つまり、昨日あなたのWebページに訪問した見込み客は、購買行動をしている可能性が高いはずです。
マーケティングオートメーションを使って、このような見込み客に接触を試みましょう。この場合は、スコアの算出期間は、昨日と一昨日だけの2日間でも十分でしょう。
無期限の購買行動をスコアとして算出してしまうマーケティングオートメーションの場合、直近で発生した重要な購買行動を見落としやすくなります。
3-2. スコアの設計に時間をかけすぎる
いざマーケティングオートメーションを導入すると、スコアの設定作業を必要以上にしてしまいがちです。マーケターの特性を考えると、購買行動や購買意欲に直結するスコアにこだわりたい気持ちもわかります。
マーケティングオートメーションで得ることができるデータ(事実)を元にPDCAを回しながらスコアの設定をすることが、最も正確にスコアを設定できるアプローチです。
特にBtoBマーケティングの場合、見込み客の行動パターンは、想像以上にさまざまです。見込み客の行動を参考にしながら、スコアを設定しようとすると、十分なデータが集まらず、そこまで詳細にスコアを設定することができません。
マーケティングオートメーションで詳細なスコアを設定するためには、どうしても仮説とその検証が欠かせません。これには時間がかかります。
マーケティングオートメーションを導入した当初は、おおまかにスコアを設定して、その後仮説を立ててそれを検証する作業を繰り返して、スコアの設定を詰めていきましょう。
マーケティングオートメーションにおけるスコアは、マーケティングオートメーションのシナリオの設定に似ています。
マーケターの勘と経験で、スコアを細かく設定したくなる気持ちもあります。ただ、お客さまの購買行動は刻一刻と変化しています。マーケティングオートメーションから得られるデータで仮説検証を繰り返しながらスコアを設定していく方法が唯一の解です。
4.マーケティングオートメーションの自動化機能を使いすぎる
マーケティングオートメーションの自動実行の機能は大変便利です。しかしマーケティングオートメーションの自動化機能を使いメール配信をしすぎると、スパムメール扱いされてしまい、結果、メール配信の到達率に影響をおよぼすことがあるので注意しましょう。
4-1. マーケティングオートメーションでメールを頻繁に送りすぎる
マーケティングオートメーションを使って自動で送り出すメール配信機能は、本当にマーケティング業務が効率化できます。
マーケティングオートメーションの自動化機能で、セミナー参加や資料請求をした見込み客に対して、一連のステップメールを容赦なく送り、購買意欲を刺激することもできます。
しかし、マーケティングオートメーションが送る一連のメールは、受信者にとって価値があるものでしょうか?
送られてくる一連のメールを受信者が開封しない場合には、最近のメールソフトはすぐに「迷惑メールフォルダ」に振り分けてしまいます。今後あなたが送るメールは全て自動的に迷惑メールフォルダにいくこととなります。
マーケティングオートメーションの自動化機能を使うと、数多くのメールを簡単に送ることができます。しかし、必要以上にメールを送りすぎると、逆効果となることがあるので注意しましょう。
このような事態を避けるためには、マーケティングオートメーションの自動化機能では、あなたのメールに反応してくれた見込み客に絞ってシナリオを設定してみることをおすすめします。
メールマーケティングやメルマガの運用のノウハウについては、無料PDFガイドブック「メルマガ&メールマーケティングのやさしい手順書」にまとめました。ご興味ある方はぜひダウンロードしてくださいませ。みなさまの業務のお役に立てれば幸いです。
4-2. 顧客の購買意欲は一瞬で高くなる
マーケティングオートメーションを導入して、実際に使ってみても、見込み客の購買意欲はそんなに簡単には上がりません。
メルマガに登録していただいた見込み客に、マーケティングオートメーションの自動化機能を使って、あなたの製品の機能詳細の資料を送ってもあまり効果は得られないでしょう。
なぜなら、情報収集中の見込み客にいきなり製品の詳細資料を送っても、すぐに購買に結びつかないからです。特にBtoBマーケティングでは、見込み客の購買行動プロセスがあります。見込み客は購買行動プロセスに従って、購買活動をすすめます。
マーケティングオートメーションの自動化機能を使ってねらうべきは、タイミングでしょう。見込み客の行動を観察して、その行動に適したメールを送ったり、電話や営業訪問などでアプローチをしましょう。
見込み客の購買行動プロセスのタイミングとマッチすれば、優位に営業活動を奨めることができます。
5.さいごに
マーケティングオートメーションの効果がなかなかみえない場合には、思い切っていろいろと設定を変えてみましょう。
簡単かつシンプルな設定で、その結果を分析することでPDCAを回して、徐々にあなたのビジネスにあったマーケティングオートメーションの設定にすることが、マーケティングオートメーションの効果を一番感じていただけると思います。
ご参考になれば幸いです。