マーケティングオートメーションの失敗しないシナリオ設計の始め方
「お客さまのニーズに基づいたマーケティングをして、売上げをUPさせたい」という企業さまのお声が私たちにも、寄せられるようになってきました。また、世の中に情報や広告が溢れ、マスマーケティングの効果が以前ほど感じられなくなってきました。
つまり企業はお客さま一人ひとりに合わせたOne to Oneマーケティングを求められるようになってきたのです。
マーケティングオートメーションの現状
なぜマーケティングオートメーションのシナリオ機能が必要なのか?
One to Oneマーケティングが求められている一方で、マーケティングにかけられるリソースは限られています。一人ひとりに合わせたマーケティングを実行しようとすると、マーケティング担当者一人あたりの負担が増えてしまうだけです。限られたリソースでビジネスを拡大することが難しいだけでなく、「働き方改革」時代の社会的流れにも逆行しかねません。
マーケティング担当者の業務を軽減する方法として、マーケティングオートメーションの活用があります。マーケティングオートメーションの「シナリオ」という機能を活用すると、マーケティング担当者の負担を下げつつ、お客さま一人ひとりのニーズに応じたマーケティング活動を展開することができます。
マーケティングオートメーションの基本情報は、「たった5分で理解するマーケティングオートメーション」でくわしく説明しております。詳細はこちらの記事をごらんくださいませ。
まだまだ使いこなせていないマーケティングオートメーションのシナリオ機能
マーケティングオートメーションでのシナリオ機能を十分に使いこなせているというマーケティング担当者の方はあまり多くはないのが現実ではないでしょうか。せっかくマーケティングオートメーションを導入しているのにシナリオ機能をうまく使えていなければ、少しもったいない気がします。
「これから、マーケティングオートメーションのシナリオ設計をする」「マーケティングオートメーションは使っているが、シナリオ機能は使えていなかった」というかたが、この記事を読み終わったらすぐにでも、マーケティングオートメーションのシナリオ設計に取り掛かっていただけるように、本記事を書かせていただきました。
マーケティングオートメーションでできること
マーケティングオートメーションでのシナリオ設計の話に入る前に、そもそもマーケティングオートメーションで何ができるのかを整理しておきましょう。
何ができるのかが分かっていないと、その機能を活用するシナリオの設計をできるはずがありませんので、まずはマーケティングオートメーションの機能から簡単にご説明します。
マーケティングオートメーションでは、これまでバラバラで運用していたデジタルマーケティングに必要な機能をくみあわせて、一つのクラウドサービスで利用できるようになりました。例えば、顧客管理とWeb解析の機能を組み合わせることで、特定見込み客の行動履歴がわかり、その見込み客のニーズが推測できます。
マーケティングオートメーションでは、見込み客のニーズが分かるようになり、営業アプローチの精度を向上できる点は、マーケティングオートメーションを導入するメリットであると言えます。
マーケティングオートメーションの機能について、もう少し詳しく知りたいかたは「マーケティングオートメーションの主な機能を理解しよう」が参考になります。合わせてご覧いただければと思います。
マーケティングオートメーションでシナリオ設計をする目的と効果
マーケティングオートメーションにおけるシナリオ設計の目的、そして、マーケティングオートメーションでシナリオ設計をする効果について説明していきます。
1.マーケティングオートメーションのシナリオ設計で業務の効率化
マーケティングオートメーションでのシナリオ設計によるもう一つの効果は、「マーケティング業務の効率化」です。
例えば、自動車ディーラーのWebページからスポーツカーのカタログ請求をした見込み客がいます。この見込み客には、自動的に「自動的にスポーツカーの選び方」に関するリードナーチャリングを目的としたメールが何回か届きます。
マーケティングオートメーションのシナリオ機能によって、Webフォームからのスポーツカーのカタログ請求がトリガーとして、設定した日時や条件に基づいてメールを自動配信しました。
上記の自動車ディーラーの例えでも分かるように、マーケティングオートメーションでシナリオ設計をして運用することにより、マーケティングオートメーション運用担当者が常にカタログ請求をした見込み客の対応をし続ける必要はなくなります。カタログ請求者に対するフォローや店舗への来場促進などのリードナーチャリングは、マーケティングオートメーションのシナリオが自動実行するため、運用担当者は別の業務をする時間が増やせたり、新しい企画に着手する余裕が生まれます。
リードナーチャリングとは見込み客と接触し、購買意欲を育成しながら購買に結びつけるためのプロセスを指します。詳しくは、「リードナーチャリングはじめてガイド」にまとめました。ご参考になれば幸いです。
2.マーケティングオートメーションのシナリオ設計によって顧客が情報を欲しているタイミングを見逃さない
マーケティングオートメーションでシナリオ設計をする目的とその効果の一つ目は、「シナリオ設計によって、顧客が情報を欲しているタイミングを見逃さないこと」です。
マーケティング担当者の業務は多岐に渡りますので、他の作業に手を取られていて、うっかり見逃してしまうということもあるでしょう。だからこそ、マーケティングオートメーションのシナリオ機能が役に立ちます。
先ほどの自動車ディーラーがマーケティングオートメーションのシナリオ機能を利用している例を再び考えてみましょう。
マーケティングオートメーションのシナリオ機能で、資料請求とその後のフォローアップを自動化することで、問い合わせとフォローアップを対応する担当者のコストを削減できるだけでなく、作業し忘れや作業のミスなどの人為的な問題を解決することができます。
作業のし忘れや人為的なミスは当然、ビジネスの機会損失につながります。マーケティングオートメーションのシナリオ機能で、作業の効率化ができるだけでなく、機会損失も防いでいます。
マーケティングオートメーションでシナリオを設計する際に考えるべき「2W1H」
ここからは実際にみなさまが、この記事を読みながら、実際にマーケティングオートメーションのシナリオ設計の作業に取り掛かることができるような内容に移っていきたいと思います。
マーケティングオートメーションのシナリオ設計をする目的は、「必要な人に、適切な形で、効率的に情報を届けること」です。
マーケティングオートメーションのシナリオに必要な「必要な人=Who」、「適切な形で=What」、「効率的に=How」を「2W1H」と称してそれぞれ考えていきましょう。
購買行動プロセスと、マーケティングオートメーションのシナリオの整合を考える
マーケティングオートメーションのシナリオ設計において重要な「2W1H」を顧客の購買行動プロセスの上で考えます。
マーケティングオートメーションのシナリオ設計をみなさまが実際に手がけることができるように、できるだけ必要最低限のシンプルな方法でご説明させていただきたいと思っております。
お客さまのニーズを中心に、購買行動プロセスの上でマーケティングオートメーションのシナリオ設計における「2W1H」を考えていきましょう。BtoCマーケティングの場合には少し文言や内容が異なる部分があるかもしれませんが、大きな流れは同じですので、ここではBtoBマーケティングにおける購買行動プロセスの図を使ってご説明します。
BtoB営業・マーケティング担当者が覚えるべき購買行動プロセスの基本事項について「5分で覚える購買行動プロセスの解説」にまとめておりますので、あわせてごらんくださいませ。
1.「誰に」を考えるために見込み客の状態を定義する(Whoの定義)
まず「誰に」情報を届けるのかを決めましょう。
「誰に」を考える際には、「どんな人物像で…」という考え方ではなく、「どんな購買行動をしている人か?」を上図の「見込み顧客の状態」を使って考えます。
また、見込み客がどの状態にあるのかを判断するために、見込み客の行動履歴を確認します。ここでマーケティングオートメーションが必要となってきます。マーケティングオートメーション上での見込み客の行動履歴から見込み客の状態がどの状態にあるのかを定義します。
例えば、自動車ディーラーの場合で説明すると、ある特定の車種の走行性能ページを何度も見ているような見込み客は、その車種が家族でのドライブに適している車なのか、通勤に使える車なのかを評価している可能性があります。よって、上図の「解決策の決定」の状態にあるかもしれません。
また、その自動車メーカーの自社メディアの「新車の選び方」というページを閲覧しているだけという見込み客は、まだ車の購入を明確に検討しているわけではなく、なんとなく現状に不満なだけかもしれないので「課題の認知」の状態にあるかもしれません。
このように見込み客の行動履歴を基準にして、その見込み客の購買行動プロセスにおける状態を定義しましょう。
まずは仮説で良いので、一旦定義して見ることが大切です。
「2W1H」は最初に設定したら不変なものではなく、現実に照らしながら少しずつ精度を高めていけばよいものです。
2.「どんな」を考えるために見込み客のニーズを推測する(Whatの定義)
では、2番目に「どんな」情報を届けたいのかを考えましょう。
「誰に」と同じく、購買行動プロセスの上で考えます。「どんな」情報を届けるのかは、「誰に」が決まれば比較的簡単に決まります。引き続き、自動車ディーラーの例でご説明します。
マーケティングオートメーションのシナリオ上で、Aという車種の燃費性能のページをある一定期間内に、X回以上閲覧した見込み客を「解決策の決定」状態にあると定義します(Whoの定義)。燃費性能のページを何度も見ているのですから、「少ない燃料でたくさん走る車に乗りたい」というニーズが強い見込み客だということは分かりますよね。
おそらく、その見込み客はたまに週末に出かける時にだけ車に乗る人ではなく、通勤のように毎日車に乗る人なのかもしれません。その為にAという車種はどうかと評価をしている状態だと推測されます。そういう見込み客に届ける情報は明白で、「燃費の良い車種ラインナップ」や「日常使いできる車種ラインナップ」の情報です。
このように、見込み顧客の状態からその見込み客が求めている情報を推測して、「◯◯な状態の見込み客には、□□なニーズがある」と、WhoとWhatをマーケティングオートメーションのシナリオ設計に追加することで、シナリオを組み立てていきます。
3.「どのように」を考えるためにコンテンツを作る(Howの作成)」
では最後にHowを考えていきましょう。
先ほどの自動車ディーラーの例で説明すると、「ホームページ」「オウンドメディア」「パンフレット」「試乗体験会」「決算セール」など、情報を届ける方法(=コンテンツ)は数多くあります。では、どんな情報をどのようなチャネルで届けるのが適切なのかを考えていきましょう。
Whatの定義でご説明した「啓蒙活動」の情報タイプは、まずは多くの人の目に触れさせて、リードナーチャリングするタイプの情報です。ブログ記事やさらに体系的にまとめられているeBookなどがよく利用されています。
「ソリューションの提示」の情報タイプは啓蒙活動によってリードが認識した課題を解決するための情報です。「ソリューションの提示」の情報は、製品サイトや製品資料、セミナーのような一般論よりも一歩踏み込んだ内容を伝えるコンテンツが適切でしょう。
最後に「製品やサービス仕様の提示」では、ポイントは顧客に自社製品/サービスを使った際の成功イメージを持たせられるかどうかです。セミナーや製品資料といった抽象的な情報ではなく、利用ユーザーの成功事例やFAQのようなより具体性の高いコンテンツが適切と考えられます。
コンテンツの作成や共有によって見込み顧客の集客を獲得するようなマーケティングのことをコンテンツマーケティングと呼びます。コンテンツマーケティングについては「コンテンツマーケティングとは?|マーケティング用語集」にまとめました。よろしければご覧下さいませ。
マーケティングオートメーションでのシナリオ設計に失敗しない3つのポイント
ここまででマーケティングオートメーションのシナリオ設計に関する基本的な知識は十分にご理解いただけたと思います。
ここからは、マーケティングオートメーションでのシナリオ設計に実際に取り掛かる際に参考にしていただける、失敗しないための3つのポイントをお伝えします。
マーケティングオートメーションのシナリオ設計のポイントは以下の3つです。
マーケティングオートメーションでのシナリオ設計に失敗しない3つのポイント
- シンプルに始める
- 必要以上にターゲットの条件を複雑にしない
- PDCAを回しながらシナリオを育てる
1.シンプルに始める
「2W1H」で購買行動プロセスに沿ってWhoを定義しましょうとお伝えしました。しかし、マーケティングオートメーションでシナリオ設計をこれから始めるという場合には、あらゆるWhoを一気に設定するのは危険です。
先ほどの購買行動プロセスの図で言う、左側に近いところにある見込み客は営業案件かからは少し離れた見込み客であると言えます。営業活動に近いところにいる見込み客に対するマーケティングオートメーションのシナリオから設計する方が効率という点で賢明でしょう。
マーケティングオートメーションでシナリオ設計をこれから始めるというかたにオススメするのは、まず売上げに最も近い見込み客をホットホットリードと定義することです。まずはホット見込み客に対するシナリオ設計と実行をしましょう。
「シンプルに始める」ことがマーケティングオートメーションでのシナリオ設計に失敗しないための最も大きなポイントです。
2.必要以上にターゲットの条件を複雑にしない
2つ目のポイントは、ターゲットの条件を複雑にしすぎないことです。
シンプルに始めることを心がけるとお伝えしました。ただ、複数のシナリオ設計を一気に始めないようにするという意味なので、ターゲットを必要以上に絞ることは避けた方が良いです。
例えば自動車ディーラーがターゲット設定を「40代前半の男性で、車種Aのカタログ請求を3ヶ月以内にしていて、自社の料金サイトを3日以内に10回以上閲覧した人」のように細かく設定すれば、おそらく車種Aの購入意欲がかなり高い人がターゲットに設定できるでしょう。
しかしマーケティングオートメーションのシナリオにおけるターゲットの条件が細かすぎるので、その条件に該当する見込み客が少なすぎるかもしれません。最悪の場合は、仮説が間違っていて、条件に合った見込み客に対して設定したコンテンツを配信したのに、全く反応がないこともあり得ます。
ターゲット設定を最初から複雑にしてしまうと、仮説検証が進まず、これから説明するマーケティングオートメーションのPDCAを回すことが難しくなってしまいます。
3.PDCAを回しながらシナリオを育てる
マーケティングオートメーションでのシナリオは一度設定したら、自動的に売上げを増やしてくれる魔法の杖ではありません。ターゲットの条件を複雑にしない理由でもあるのですが、マーケティングオートメーションでシナリオを実行したら、当然ながら、結果の分析と検証は欠かせません。
マーケティングオートメーションから得られる見込み客の行動履歴に基づいて定義した見込み客の状態は?その見込み客のニーズは?提供したコンテンツは適切?など少しずつ分析し、再検証していく過程の中で成功パターンが見えてくるものです。
マーケティングオートメーションのシナリオはPDCAを回しながら、少しずつ成長していくものです。粘り強く実践していきましょう。
まとめ
いかがでしたか?早速マーケティングオートメーションでシナリオ設計をしてみたくなりましたでしょうか?最後に全体をまとめました。ご参考になれば幸いです
この記事がみなさまのご参考になれば幸いです。