教科書が教えないBtoBマーケティングの実際

2015年06月08日

BtoBマーケティングの仕事は数多くあるものの、BtoBマーケティングについて勉強する機会はあまりありません。書店に行ってマーケティング本のコーナーに立ち寄れば、BtoCに関係するマーケティングの本ばかりが目立ちます。なかなかBtoBマーケティングの本にお目にかかれません。

BtoBのマーケティングの仕事は、職人さんのように、現場の経験のみしか学べないのでしょうか?パソコンに向かって仕事をする機会が増えている現在では、それは不可能でしょう。BtoBマーケティングを学ぶチャンスはあまりありません。

そこで、BtoBマーケティングについてもっと多くの方に学んでもらえるよう、BtoBマーケティングの基本的な内容をまとめてみました。

もっとBtoBマーケティングを学びたいと思っている方の参考になれば幸いです。

BtoBマーケティングの概要

BtoBマーケティングはBtoB事業分野における生産財や企業間取引に関わるマーケティング活動です。マーケティングの教科書などでは、「生産財マーケティング」と表現することもあります。

例えば生産財を提供するビジネスでは、生産財を仕入れてデザインや加工を加え自社製品を製造します。製品の材料を仕入れ、価値やデザインを加え付加価値を作り出します。

BtoBマーケティングは、BtoCマーケティングとその特徴をめとめると、次のようになります。

項目 BtoB BtoC
商材 生産財 消費財
購買頻度 定期的 都度
価格弾性 高い 低い
付加価値 低い 高い
ブランド効果 低い 高い

BtoBマーケティングはBtoCマーケティングとここが違う

一方で、BtoBマーケティングは、BtoCマーケティングと似ているところがあります。

BtoBマーケティングはBtoCマーケティングのアプローチを基本としながらも、BtoBマーケティング独自の慣習が多くあります。

BtoBマーケティングでBtoCマーケティングと比べて異なる特徴をいくつか取り上げてみましょう。

BtoBマーケティングのプロモーションの方法

BtoBマーケティングにおけるプロモーションの手法は、BtoCマーケティングと比べるとその違いがよくわかります。

BtoCマーケティングのプロモーションは一般的に、ある製品に絞りこみます。お菓子の場合なら、特定の味やパッケージを中心に、幅広いオーディエンスに宣伝します。

BtoBマーケティングの場合は、BtoCマーケティングのプロモーションとアプローチが異なります。

BtoBマーケティングでは、製品のラインナップがいくつかある場合、製品ラインナップの全て、もしくは製品カテゴリーのブランドを宣伝します。BtoBマーケティングのプロモーションの対象は、特定のセグメンテーションと限定的です。

BtoBマーケティングの製品メッセージ

製品やサービスのメッセージの作り方にも違いがあります。

BtoCマーケティングでは、消費者の感情に訴えるようなメッセージを展開します。メッセージの中で、いわゆる「シズル感」を出して、おいしさや臨場感を表現して、消費者の「無性に食べたくなる」感情をあおります。

つまり、BtoCマーケティングでは、消費者にどうやって感じてもらえるかが購買を左右するからです。

一方で、BtoBマーケティングの購買者には専門知識が十分備わっており、購買は専門的に判断します。つまり、BtoBマーケティングの購買者は製品が採用する技術や製品の仕様など、購買する製品の質を重視します。

またBtoBマーケティングにおける購買者は、製品のコストを気にかけます。その製品を生産財として仕入れて自社製品を開発する場合、十分な利益の確保についても検討します。

そのためBtoBマーケティングでは、製品の質や利用者のメリットに関するメッセージ(バリュープロポジション)をつくることが一般的です。

バリュープロポジションについて
バリュープロポジションとは、あなたの会社の製品やサービスを通じて提供する価値の確約(コミットメント)です。詳しくは「良いバリュープロポジションを作る5つのコツ」を参考にしてください。

このようなBtoBマーケティングの購買者の特性は、BtoC(消費者)マーケティングではあまりみかけません。

ニッチなターゲットを狙うBtoBマーケティング

BtoBマーケティングでは、ターゲット層を非常にニッチに設定することがあります。そのターゲット層に特定のニーズがあれば、製品メッセージをチューニングして、ニッチな市場を攻略します。

例えば自動車のエンジンの部品などはニッチと言えます。エンジン部品もBtoBマーケティングの対象となる市場であり、実際にBtoBマーケティングを展開している企業があります。

BtoBマーケティングでこのような市場を攻略するためには、業界特有の販売経路、広告の露出、顧客へのアプローチがあります。そのため、BtoBマーケティング担当者は、ターゲットとなる業界について十分な知識を持たなくてはなりません。

価値を基準にしたBtoBマーケティング特有の料金設定

例えばBtoCの購買で、ポテトチップスの価値やそれを食べることで得ることができる経済的価値価を考えて購入をする方はほとんどいないでしょう。

BtoBマーケティングのターゲット顧客は、製品の価値やコスト、それを使って生み出す自社事業の利益率など、詳細に渡って製品を検討します。

BtoBマーケティングでは、製品のバリュープロポジションや製品の質、顧客サービスの良さをアピールします。いったん、顧客が製品の対価を認めると、しっかりと対価を支払います。

BtoBマーケティング担当者は業界の慣習を知るべし

BtoBマーケティングの担当者は、基本的なマーケティングや広告宣伝のスキル以外に、自社がターゲットとする業界特有の知識が必要です。

マーケティングや広告宣伝のスキルに加えて、業界の知識があってはじめて、その業界に対して最適なアプローチの方法がわかります。

あるニッチなセグメンテーションでは、ブログにしても、ジャーナル(会報誌)、展示会やセミナー、業界専門紙への広告、口コミなどBtoBマーケティングに必要なメディアやプロモーションの方法が少し特殊です。

このような市場を攻略するために、BtoBマーケティングの担当者は、業界のターゲット顧客が情報を集める方法をよく理解しておくべきです。

BtoBマーケティング担当者が知っておくべきBtoBビジネスの8の特徴

BtoBマーケティングの特徴は徐々に理解できましたか?もう少し詳しくBtoBマーケティングについてみていきましょう。

1.購買する製品によって関わる購買メンバーが変わる

個人の買い物なら高額な商品を除いてほぼ自分1人でシンプルに購入を決定するでしょう。しかしBtoBマーケティングの世界では、顧客購買行動プロセスはやや複雑です。

BtoBの購買行動プロセスについて
BtoBの購買行動プロセスはBtoCとは異なります。しかし、ある程度モデル化が可能です。BtoBの購買行動プロセスは、「BtoBの購買行動プロセスの詳しい解説」でまとめております。

BtoBの購買行動には、一般的に複数の社員が関わります。購買に関わる担当者は、会社内の役割や、購買する製品によってもさまざまです。購買に関わるメンバーは、購買する製品に関する「リスク」と「価値」によって決まります。

「リスク」も「価値」も低ければ、担当者が1人で購買を決定します。逆に「リスク」と「価値」の両方が高ければ、あらゆる関連する部門のスタッフが購買の決定に登場します。

「リスク」が低く「価値」が高い製品では、製品に関連する専門知識を持つ技術者が購買の決定に関わります。

「リスク」が高いが「価値」が低い製品は、法務や総務の方が関わり、リスク面について評価することが多くなります。

2.BtoBの購買者は慎重に購買を決定する

BtoBマーケティングで関わる購買者は、感情で購買を決定することはまずありません。これには議論の余地があるかもしれませんが、おおむね当てはまると考えています。

BtoCの場合、450円するタバコと、450円のタバコを利用することで解決する問題、害する健康リスクを経済的な価値で比べることはあまりないでしょう。単にたばこを吸いたいと思うから、タバコを買っています。

BtoBマーケティングで関わる購買者は、ROI(対投資効果)を最優先して購買を決定します。つまり、その製品を購買することによる自社の事業のメリットが大事です。

事業メリットには、製品の質、サポート、コストに加え、自社のブランドにも関連します。

また、購入して事業に対して悪いインパクトを与えてしまうと、購買者の評価にもつながってしまうため、BtoBマーケティングで関わる購買者は、極めて慎重に購買を決定します。

3. BtoBマーケティングのターゲット顧客は製品仕様の詳細にこだわる

BtoBマーケティングの対象となる購買者は、製品の技術仕様からサポートまで細部に渡って、購買の検討材料とします。

例えば生産財で、自動車のエンジンや速度メーターなどの部品の購入を検討している場合は、技術的な適合、出来上がりの見栄え、安全性、など様々な面から評価します。

一方で、消費者商品の洋服などの場合、主にサイズとデザインが購買の決め手になります。生地の技術や製法、購買後のサポートはあまり気にかけません。

4.BtoBマーケティングではヘビーユーザーを特に大事にする

BtoCの製品利用者はBtoBに比べて圧倒的に多くいます。ほんの1部の利用者が全体の8割の売上を占めることはごくまれです。

一方BtoBマーケティングでは、パレートの法則がよくあてはまります。

パレートの法則
パレートの法則は、元々経済学者が発見した法則です。現在では、経済学だけでなくビジネスでも幅広く活用できる法則であることがわかっています。詳細は「パレートの法則|マーケティング用語集」を参考にしてください。

BtoBマーケティングの世界では、2割の利用者が全体の8割以上の売上に貢献していることは少なくありません。

BtoBマーケティングでパレートの法則が成り立ちやすいのは、BtoBマーケティングではニッチな市場を狙うため、BtoBの顧客数がそもそもBtoCに比べて少ないことが原因です。

5.顧客との対面コミュニケーションを大事にする

BtoBマーケティングでは顧客との関係づくりが欠かせません。営業が初対面のお客さまに比較的簡単に会えるのは、営業活動の前段にあたるマーケティング活動で築いた信頼からなる関係性のおかげです。

BtoBマーケティングの予算はBtoCと比較すると、かなり少ないでしょう。しかし両者の営業経費を比べると、BtoBの営業の接待費や交際費はかなり多いはずです。

BtoBビジネスでは、対面のコミュニケーションで顧客と長期にわたる良好な関係が大事だからです。そのため、BtoBマーケティングでは、展示会やセミナーは今でも重要視されています。

6. BtoBマーケティングで設定できるセグメンテーション数が少ない

BtoBマーケティングでは、BtoCに比べて、顧客のニーズを元にしたセグメンテーションの自由度があまりありません。おそらく3〜4種類のいずれかのセグメンテーションで顧客を分類できます。

BtoBマーケティングで分類すべき基本的なセグメンテーションは以下のようにまとめられます。

BtoBマーケティングのセグメンテーション

  • 価格感度が高い:製品に余分な機能は全く必要ない。中小企業や利益率が低い業界に多い。
  • 質とブランド重視:背景はさまざま。ブランド戦略を重視する大企業など。
  • サービス重視:仕様や品質の要求に加え販売後のサポートも重視する。大量購入する企業などがこれにあたる。
  • 戦略的な提供を重視:自社に主要顧客があり仕入れ部品の信頼性や安定性が重要。
  • もちろん従来の業種や役職などのセグメンテーションも有効です。これらのセグメンテーションも、さきほど紹介した分類で分けられるでしょう。

    BtoBマーケティングの担当者は、自社の顧客を見極め、正しくセグメンテーションしなくてはなりません。

    7.BtoBマーケティングには偶発的なイノベーションの機会がほとんど無い

    BtoBビジネスはリスクをあまり取らないため、業界のイノベーションが起きるきっかけが少なくなります。

    購買する顧客側もROIを計算し事業リスクをおさえる傾向にあり、自社のビジネスの安定性を重視します。そのためイノベーションのきっかけとなる製品はなかなか選定できません。

    BtoBマーケティングはイノベーションが苦手ではありません。しっかりと調査、計画をして狙ったイノベーションは、BtoCよりも確実に起きる傾向にあります。

    8.自社ブランドの育て方が異なる

    BtoBマーケティングでもブランドは重要ですが、製品ではなく企業のブランドがより重要になります。

    BtoBでは、購買者の技術力が高く知識も豊富であるため、製品のブランドよりも製品の仕様で比較します。BtoCマーケティングのような製品のブランドや、製品カテゴリーのサブブランドは、購買者の混乱を招くだけです。これは購買者に専門的な知識が少ないBtoCマーケティングとの大きな違いです。

    またBtoBマーケティングでは、マーケティング部門だけでなく営業担当者も顧客と接します。フロントにいる営業担当者に高い技術知識や業界知識を兼ね備えていなければ、せっかくの会社のブランドが台無しになることもあります。社員の教育もBtoBマーケティングのブランドの課題となります。

    まとめ〜教科書が教えないBtoBマーケティングの実際

    BtoBマーケティングは、多大な予算を使うよりも、知恵と頭を使って戦略を絞り出す作業が多くなります。イノベーションやブランディングなどをとっても、教科書だけでは学べません。実践あるのみです。

    このブログの記事では、みなさんのBtoBマーケティングのスキルアップに参考となる情報を集めました。役に立つと思ったら、同僚やお知り合いにもご共有ください。

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