展示会へ出展は、BtoBマーケティングにおいて、リードを獲得するための有効な1つの手段です。
展示会の出展を決めた会社では、多くの予算を確保し、展示会出展への準備のため多くの人的リソースを確保します。展示会出展を通じて、自社のブランドを露出したり、多くの営業案件をうみだしたりすることが、展示会出展の目的です。
その一方で、数多くの来場者が来る展示会でも小規模の展示会でも、来場者の目的は今すぐ購入すべき製品やサービスを探すためではなく、業務に関係のある製品やサービスの情報を仕入れるなど業務に有益な情報を集めていることがほとんどです。
展示会をとりまく状況が変化する中で、展示会出展者はあらためて自社の展示会出展の目的と戦術を見直す必要がでてきています。
展示会出展の効果は年々変わっている
展示会出展は、BtoBマーケティングにおいて、名刺情報を獲得するための中心となる活動の1つであることは変わりません。
展示会のかなり前から部署や会社をあげて準備に取り組むことが多く、多額の予算と多くの人的リソースが展示会に投入されることが一般的です。
展示会で接触した来場者を、そのまま営業案件につなげる事を短期的な目標としているため、営業部門もマーケティング部門が出展する展示会から、良質なすぐに契約につながるリードを期待しています。
しかし展示会出展から今すぐの営業案件につながる確率は年々少なくなっている現状があります。
展示会の出展企業に影響を及ぼす景気の停滞
展示会出展から営業案件につながる確率が少なくなった背景のひとつにマクロ環境の変化があります。
マクロ環境とは、自社や競合会社の活動とは無関係であるものの事業に影響を与える、社会的、政治的、経済的、技術的な大きなトレンドの流れ(変化)をさします。マクロ環境の分析は、その頭文字をとってPEST分析と呼ばれています。PEST分析については「PEST分析のやり方|戦略立案と環境分析の手順」でまとめました。合わせてごらんくださいませ。
ここ10年以上日本の経済が停滞気味であり、各業種でも市場そのものが停滞気味になる傾向にあります。もちろん、伸びている業界であればあるほど、展示会への出展社、十分な予算を持った来場者が多く、展示会のブースで営業案件につながる機会が増えることは言うまでもありません。
しかし停滞気味な業界では、展示会来場者の予算も例年と同じかそれより縮小し、購買の決定も慎重になりがちです。
具体的なニーズを持つ展示会来場者は、関連する製品について慎重に調査します。展示会来場者の関心が高い場合は、展示会の出展の有無に関わらず直接個別に連絡を取ります。
展示会来場者が興味のある製品を展示会会場で見つけた場合でも、帰社後に情報を関係者と共有し、関連する他社製品と比較する傾向にあります。
展示会の来場者との接触だけでは、すぐに営業案件にはならない傾向にあります。
インターネットでの情報公開の展示会への影響
展示会の出展の効果が伸び悩む主な理由に、企業が積極的にWebサイトやブログ、ソーシャルメディアで情報を提供することがあります。
展示会の来場者からしてみれば、わざわざ展示会に行かなくても、インターネットから同様の情報が手に入ります。
製品を提供する企業が情報を提供するだけでなく、その製品の利用者も情報を提供するようになってきました。
購買に関するニーズが高くなれば、タイミングを合わせて展示会へと足を運ぶよりも、まずはインターネットで情報の検索をした方が簡単です。自分の都合の良いタイミングでかつ競合製品の情報まで獲得できるため都合が良いと言えます。
展示会来場者の目的の変化
展示会に出展する立場になると、展示会に来場する立場を忘れ勝ちです。ここで展示会に来場する立場になって考えてみましょう。あなたはなぜ展示会へと足を運ぶのでしょうか?
展示会に来場する理由のほとんどが「情報収集」です。具体的な購買へのニーズが存在しておらず、「漠然とした情報収集」が目的ではないでしょうか。
「金曜の午後は息抜きに展示会に顔でも出してみよう」、「最近は何か面白い企業や製品があるだろうか」、「上司から指示されたから」、などが展示会へ足を運ぶ理由となっている傾向ではないでしょうか。
当然のことながら、決裁者や意思決定者よりも現場の担当者が展示会に足を運ぶことになります。
展示会出展の目的を来場者に合わせてチューニング
展示会の来場者は、ニーズが具体化していない決裁権の無い現場の担当者がほとんどであり、情報収集が主な目的。
このような状況で、展示会出展側の企業では、どのような対策を取るべきでしょうか。
展示会来場者は少なくともあなたの会社や製品の興味がある
もちろん展示会出展により接した展示会来場者から今すぐの営業案件を探し出すことは、最優先事項であることは変わらないでしょう。
展示会来場者の状況をみると、どうしても「今すぐ」顧客になりそうな来場者に出会う確率は小さいと考えるべきです。
ただ展示会出展によって獲得した名刺をそのまま廃棄してしまうのは非常にもったいないです。展示会会場であなたのブースに立ち寄っていただいた、つまり、まだまだ営業案件化できないとしても、あなたの会社や製品に何らかの興味がある見込み客であるからです。
その場で営業案件化しなくても、今後の見込み客である
展示会に出展した効果を最大化するためには、展示会で獲得した名刺情報への展示会後のフォローアップをしましょう。
あなたの会社や製品に興味があるお客さまにとって業務に関連する役立つ情報を届けます。定期的に届ける情報によって、展示会来場者のニーズが明確になって購買プロセスにはいればしめたものです。この一連のプロセスはリードナーチャリングとして知られています。
このように展示会出展に関連する施策は、長期的なものと短期的なものに分けるべきです。
少し長い視点で展示会出展の効果を最大化する
長期的な視点で見た展示会出展の目的は、獲得した名刺情報から営業案件を探し、売上アップにつなげることでしょう。展示会で獲得した名刺がすぐに営業案件になりません。展示会後のリードナーチャリングで、引き続き接触しながら営業案件に変えていくことが必要です。
訪問や電話ではなく、メールを中心にリードナーチャリングを始めるなら、リードナーチャリングで活用できそうなメールの「型」を覚えておくべきです。メールの「型」は、「効果的なメールマガジンの作り方!6種類を解説」にまとめました。ご参考になれば幸いです。
展示会の来場者の傾向を考えると、展示会に関するマーケティング活動は長期的な視点も取り込まなくてはなりません。
いずれの場合も、展示会の来場お礼メールを展示会後に送ることから始めてみましょう。
展示会来場のお礼メールの例文を、「展示会お礼メールの書き方と活用法〜展示会の効果を最大にするために」にご用意しました。みなさまの業務のお役に立てますと幸いです。
一方で展示会の出展効果を短期的に評価する必要もある
展示会の出展予約は早ければ早いほど、名刺を集めやすい場所を確保できる確率が上がります。展示会の出展予約は場合によっては1年以上前から始まります。そのため、展示会出展しながら来年度の出展の可否、出展規模を考えなくてはなりません。
展示会を短期的な視点でも評価するなら、獲得営業案件数と、その展示会での見込み顧客の獲得数と展示会出展にかかった費用を参考にしましょう。獲得営業案件数と、見込み客の獲得単価が短期的な視点で展示会の出展効果を測る良い指標です。
展示会で少しでも多くの名刺情報を獲得するための工夫
展示会に出展する企業は大変に多く、大きな展示会だと数百以上の出展者でひしめき合っています。展示会の来場者は当然、すべてのブースに立ち寄るわけではありません。
展示会の来場者が展示会会場に留まる時間は、せいぜい半日程度でしょう。この時間内で展示会来場者の業務にとって必要な情報を収集します。
来場者は通常、展示会場でのパンフレットや展示会のWebサイトで出展社を確認します。まずは、業務の報告に便利な大手企業を確認し、多少興味のありそうな分野が集まるブースの場所をチェックするでしょう。
あなたの会社が大手企業でなければ、来場者があなたの展示会ブースに足を止めてくれる確率は下がります。
少しでも多くの展示会来場者の名刺を獲得するために、自社のWebサイトやメルマガでもあなたの会社が展示会出展することをお知らせすべきです。展示会のWebサイトからそのページへとリンクがあれば好ましいでしょう。Webサイトの場合は、トップページにちょっとだけバナー掲載するよりも、より具体的な展示情報を発信する特設ページを作るのが好ましいでしょう。
展示会出展の案内状・招待状を既存のリストに送付することも忘れないようにしましょう。メールで展示会の案内状・招待状を送付する際には、伝える情報をシンプルにします。展示会出展の準備についつい熱が入り、お知らせするメールが長文になってしまう傾向にあります。長文のメールはなかなか読んでもらえません。シンプルに展示のポイント、来場者があなたのブースに立ち寄るメリットをまとめましょう。
いずれにしても、来場者が短時間で巡回するショートリストに入れてもらうことが第一の狙いです。
展示会出展での注意点(まとめ)
展示会出展は、あなたのマーケティング活動全体の一部と捉え、新規の見込み顧客の獲得を目的とすることも大切ですが、リードナーチャリングの一環としても位置づけることも可能です。
展示会出店は、まだまだBtoBマーケティングの有力な手段です。できるだけ出展効果が高くなるよう、本記事のなかで活用できそうなポイントがありましたら、今すぐにでも実施してみてください。