仕事の判断力に磨きがかかる!ビジネス分析の手順
仕事ではあらゆる場面で判断力が必要です。正しい判断ができれば、仕事のアウトプットの質がどんどんよくなります。
仕事で使う判断力に磨きをかけるためには、判断のためのビジネス分析の効率と精度を改善しなくてはなりません。短い時間でできるだけ正しい判断をする。そのためには何が必要でしょうか?
1.意思決定や判断のためのビジネス分析とは
意思決定や判断には必ず分析が必要です。そして、ビジネスにおける分析は、これまで私たちが学校の教科書で学んできた分析とはそのアプローチが異なります。
1-1.ビジネス分析は「分析」なのか?
一般的に分析とは、外観からではその因果関係がわからない複雑なことを、事実を元に因果関係を明らかにしていくこと、と言えます。分析の意味はその通りだと思いますが、判断するためには、ここまで厳密なプロセスは必要ないでしょう。
判断をするためのビジネス分析では、「A」と「B」の絶対的な点数や定量を知ることはあまり重要でありません。「A」か「B」のどちらが良いか、つまり、「A」と「B」を相対的に評価できれば良いのです。
判断力を磨くためには、できるだけ精度よく相対評価を短時間で効率的にすることにつきます。
1-2.ビジネスの分析では絶対量ではなく優劣が大事
マーケティングの仕事を例にとってみましょう。
メルマガを送る対象を業種別にするのか役職別にするのか、という判断をする時があります。マーケターの仕事の判断力を問われるシーンです。
この判断をするためには、業種別と役職別のそれぞれのセグメンテーションの使い方によるメルマガの反応、営業案件数の増加、売上への影響などのメルマガのパフォーマンスを評価しなくてはなりません。
現実には、どちらのセグメンテーションが良いか判断できる完全な分析は難しいでしょう。なぜなら過去の一連のデータにそれぞれメルマガの開封率などの絶対的な数値が必要だからです。そのようなデータが全て手元にそろっていれば良いのですが、なかなかそんなことはありません。
詳しいビジネス分析は、時間がかかるだけでなく、結果にあまり大きな意味を持ちません。なぜなら、ビジネスの判断では、2つの選択肢の優劣がわかれば良いからです。
そもそもビジネス分析では有効かつ現実的な方法を導き出すことが目的であるため、定量分析は必ずしも必要ありません。判断力を磨くためには、このような概念を理解して、短い時間で期待する成果を出すことが大切です。
2.判断力を磨くビジネス分析の心得
判断力を磨くことは、必要な分析とその精度を理解することにつきます。判断を目的としたビジネス分析で必要な手順と精度はどのようなものでしょうか?
2-1.最初に課題の定義をする
あらゆるビジネス分析では、まず解決すべき課題を明らかにします。課題が明確になっていないと、やり直しや差し戻し、必要以上に分析の精度を上げてしまうなど、かかる労力が無駄になります。
あなた会社のビジネス上の課題が、売上増大なのか、利益改善なのかで、ビジネス上の課題の所在を探し出すための分析のアプローチが異なります。
もし売上に課題があるとするなら、コストに関する分析よりも、市場の動きや利用者の購買に関する行動の変化などの分析を優先する必要があるでしょう。
一方で利益確保に課題があるなら、マーケティング施策の費用対効果に関する分析がより重要になります。課題の所在によって、取り組むべき分析の優先度が変わってきます。
2-2.ビジネス判断プロセス全体の流れを理解する
課題を明確にしたら、問題解決の全体像を見て考察や洞察を深めるようにします。
問題解決の全体像は、問題解決や論理的思考の書籍でもよく取り上げられている「空」「雨」「傘」を使った例が有名です。朝、家を出るときにその日は傘を持っていくかどうかという判断という課題解決をする例です。
最初に空を見て、雲の多さなどの事実を見ます。そして、「事実に基づきその事実の意味合いを整理」します。例えば「雨が降りそうだな」という考察です。その意味合いからその日に傘を持っていくか決めるでしょう。
これが洞察であり、判断力を磨く上では欠かせません。
漁師や農家の方には私たちにはない「勘」、つまり優れた洞察力が働いているため、分析の精度が非常に高くなり、精度の高い判断を瞬時にしているわけです。
判断力の裏側ではこのようなプロセスがあるのですが、なぜかビジネスになると「事実に基づきその事実の意味合いを整理」というプロセスが消えてしまうことがあります。つまり、売上が悪いから広告をどんどん出して集客する、などと、「雨」を認識する考察のプロセスが抜け落ちてしまうのです。このプロセスは根本的な問題の原因に触れてないため、解決策が本質的な解から少し遠くなる傾向にあります。
2-3.多くの事実や仮説を洗い出す
次に、網羅的に事実を洗い出します。事実が完全に掴めない時は仮説で対応します。事実や仮説の洗い出しの作業にはあまり時間をかけないようにしましょう。
網羅的に仮説を洗い出す時に、ある問題点の具体的な分析をしてしまいがちです。この段階では個々の要因についてあまり深掘りをしないようにしましょう。そのために、ビジネス分析のフレームワークを使うと便利です。当社が無料で提供する「マーケターのためのビジネスフレームワーク集25選」が参考になります。ぜひダウンロードしてください。
網羅的に事実や仮説を洗い出したら、それぞれの要因の影響度合いの大きさを分析します。
2-4.効率よく事実や仮説を探し出すためにフレームワークを活用する
例えば、市場シェアが下がる原因について、マーケティングミックス(4P)のフレームワークを使ってみます。すると、以下のような代表的な調査の必要性を導き出すことができます。
ビジネスフレームワークを使った仮説抽出の例
製品:ブランドの認知、顧客ニーズに対する製品の機能適応状態など プロモーション:広告宣伝の効果、広報活動の効果など 価格:類似製品の価格変動、自社の価格プロモーションの効果など 流通:流通経路別・地域別の市場シェア、営業あたりの売上調査など
それぞれの分析や調査は、類似製品との比較、市場のトレンドに注目して、機械的に実施していきます。この段階で、おおよその問題点が浮かび上がってくるでしょう。
ビジネス上の問題点に優先順位をつけるには、現状における市場や類似製品との絶対的なギャップに加えて、仮にこのままの傾向で将来的にどうなるか?という視点を持って予測できる将来の変化を試算することも大切です。
ここで導き出す要素を売上に換算すれば、市場シェア低下の要因をより定量的に導くことができるでしょう。
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2-5.事実に基づき意味合いを整理する
ビジネス分析において考察するプロセスが抜けているため、判断が少し本質からずれてしまっている例をみてみましょう。
マーケティングの仕事で、営業現場のスタッフなどを集めて、マーケティング施策で市場シェアを上げるための解決策に関する意見交換を目的とした会議があります。
会議の中では、テレビの広告宣伝を増やす、営業人員を増やす、などのわかりやすい思いつきに近い解決方法についての議論が多くなります。こうした意見に関しては、ビジネス分析をしないで例えば広告宣伝への積極的な投資をするという解決策が合意にいたることがあります。
こんな経験ありませんか?
これは、「事実に基づきその事実の意味合いを整理」という「雨」のプロセスを完全に飛ばしてしまっています。
つまり、先ほどの「空」「雨」「傘」の例でいうと、「空」は問題や課題がどこにあるかを明らかにするための現状把握、「雨」は解決策に結びつく意味合いそのものも、「傘」は解決案の策定にあたります。
漁師や農家の方ですと、これまでの経験から「西に〇〇雲が出ていて、風が海から吹き付けている時には夕方から雨になる」などの、現状の事実からの意味合いの抽出が非常に長けています。ビジネスでも良い判断をするためには、この意味合いの抽出が非常に大事です。
3.ビジネス分析の注意点とコツ
判断力には事実や仮説をベースにした分析を必ずします。分析を効率よく精度をあげれば、あなたの判断力に磨きがかかります。分析の大事なポイントをまとめました。
3-1.事実の羅列は分析ではないことに注意
判断をするためには事実が重要ですが、事実を並べただけでは分析になりません。分析には事実の意味合いが必要です。事実の意味合いをうまく活かしている分析によって、あなたの判断力に磨きがかかります。
判断をしなくてはならない会議の資料があります。営業成績という事実を並べただけの資料や、アンケートの結果だけが羅列してある資料は、単に事実を羅列してあるだけで、分析とは言えません。判断をともなう会議の配布資料としては不十分であると言えます。
ほんのささいな毎日の仕事からでも、判断力を磨くための訓練は可能です。
3-2.洞察力を磨くために事実を切る・分ける・並べる
一見事実の羅列だけでは、なかなか事実から導き出す意味合いが見つかりません。つまり、事実の羅列であり、分析と言えるレベルに到達していません。
羅列した事実から意味合いを見つけるためのちょっとしたコツがあります。それは、事実の集合を「切る」「分ける」「並べる」ことで事実から意味合いが見えてきます。
「切る」とは、多面的に見るということです。売上のデータだけを見ていても、なかなかそのデータという事実が見えませんが、例えば、売上のデータと一緒に市場シェア見て見ると問題点が見えてくることがあります。
「分ける」とは、もう少し細かい集合体に分類することです。売上データを地域別にみると、一見売上は順調に伸びているように見えても、ある地域では売上が減少しているなどの問題点が見えてくることがあります。大きな集合体のデータは表面的であり、その中に介在する問題点はなかなか見えないものです。
「並べる」とは、複数のデータを並べてみることです。営業案件のクロージングの日数が増えているというデータがあります。一見営業活動に問題があると思いがちですが、実は、製造における品質が問題で、その問題を営業活動で補っているという問題が見えてくるかもしれません。
3-3.ざっくり分析としっかり分析を使い分ける
ブレーンストーミングなどでアイデアを集めて、その因果関係を整理していくつかの仮説に絞り込むことがあります。これは確かに分析ですが、「ざっくり分析」にあたります。この段階では、アイデアを出すことと、ある仮説に絞り込むことが目的ですので、時間をかけてしっかり分析する必要はありません。
ただし、ざっくり分析で導き出した仮説を精査する分析では、さまざまな角度から深い分析をする必要があります。仮説の正しさを証明するための分析は「しっかり分析」にあたります。
「ざっくり分析」に必要以上の精度を求めたり、時間をかけたりすることはご法度です。
3-4.分析の流れにおける現在地を意識する
判断をともなう分析は、必ずそのオーナーがいます。誰のために分析をするかということです。
分析内容を同僚に共有したり、上司に報告したりするときに、分析の流れと今の作業の現在地をしっかり理解していないと、何をどのように報告すべきか迷ってしまいます。つまり、自分の言いたいことが不明確になります。これはコミュニケーションの観点からもあまり良いとは言えないでしょう。
判断をともなう分析では、その流れを理解し、現在地をしっかりと認識しておけば、いつでも情報共有や報告がスムーズにできるようになります。
4.さいごに
判断を完璧にしたい、そのために分析は緻密かつ精密に行いたい。確かに研究目的の分析には、このような精度が必要です。
しかしビジネスで判断をするための分析では、AなのかBなのかがわかれば十分です。同じ「分析」であるものの、そのアプローチが大きく異なることに注意しましょう。