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営業力強化はマーケティングとの連携で成功させよう

営業力強化は、経営における最重要課題の1つでしょう。他社よりも市場のシェアを獲るためには営業力強化は喫緊の課題です。

しかし営業力強化は、営業担当者を教育するだけでは、大きな効果を得ることができません。

営業力とマーケティング力の両方が欠かせませないBtoBビジネスでは、営業とマーケティングの協調が営業力強化には不可欠です。

現実をみると、残念ながら、営業とマーケティングの連携がうまくいっている企業はあまり多くありません。

営業担当者からみればマーケティングは「営業売上にほとんど貢献していない。ひどい見込み客ばかり集めてくる」と感じています。同時にマーケティング部門は営業部門に対して「マーケティング活動で得た見込み客へのアプローチをサボっている」と愚痴をこぼすこともあります。

営業とマーケティングの間には、コミュニケーションに関わる根深い問題があります。

1.営業力強化の裏にあるマーケティングと営業の現状

営業力強化にはマーケティングの力が欠かせません。ビジネスが拡大し、ターゲットとなる顧客が増えるほど、営業力強化のためのマーケティングの必要性が大きくなります。

営業とマーケティングの間のギャップは解決すべき昔からの課題でありながら、多くの現場に今でも存在しています。

1-1.営業担当者が感じる自社マーケティングの課題

BtoBビジネスの営業部門からよく聞くBtoBのマーケティングの課題点は、以下に集約できます。

営業部門が感じる自社マーケティングの主な課題

  • 営業の売上にあまり貢献しているとは思えない
  • マーケティング予算をかけているにも関わらず、十分な量の見込み客を獲得できていない
  • 獲得する見込み客の質が悪く、営業引合いに結びつかない
  • マーケティングの仕事なんて営業でもできる
  • 我が社のマーケティングメッセージはお客さまの心に全く響いていない

1-2.マーケティング担当者が感じる自社営業力強化の課題

一方で、BtoBマーケティング部門は自社の営業チームに対して、このように思っているようです。

マーケティング部門が感じる自社営業の主な課題

  • せっかく獲得した見込み客へのフォローしないため、データベースに休眠見込み客が増える一方だ
  • マーケティングメッセージを作るために十分な顧客ニーズなどの情報をくれない
  • 忙しいことを理由に、セミナーや展示会への出展の準備と運営をあまり手伝ってくれない
  • 営業の仕事なんて自分でもできるくらい簡単だ
  • 会社のメッセージを的確にお客さまに伝えてない
  • マーケティングが用意した資料もいい加減に使われていてブランドの統一ができなくなっている

1-3.営業力強化を望むマーケティングと営業の想い

マーケティング部門も営業部門も、自社の営業力強化によって売上目標を達成することを望んでいることは間違いないでしょう。

営業力強化を目指す営業部門が売上目標に達しなければ、その理由の一つとしてマーケティング部門は獲得する見込み客の数と質の問題があります。

一方で、マーケティング部門では、営業部門が売上目標に達しないのは、単にマーケティングが獲得した見込み客をしっかりフォローしないことが原因だと考えがちです。

米国の統計データによると、営業部門もしくはマーケティング部門の担当者の約9割がこのようにお互いをよく思っていないそうです。直感的にこの統計情報はおおよそ正しいと感じています。

2.営業力強化でマーケティングが欠かせないわけ

営業力強化という課題を解決するにあたり、マーケティングと営業の連携は必要なのでしょうか?ここでもう一度、営業力強化のために実現できるマーケティングの活動とその理由について考えてみましょう。

2-1.知名度アップが会社の営業力強化につながる

営業力がビジネスの成長を左右するBtoBビジネスでは、有効なマーケティング活動が無ければ、他社との争いを有利に展開することはできません。

市場で大きなシェアを収める企業は、市場において製品やサービスの知名度が非常に高く、お客さまが購買の際に検討する製品やサービスの検討リストに入る確率が高くなります。製品やサービスの知名度が見込み客の購買行動プロセス、つまり企業の営業力に大きな影響をもたらしているといえます。

事実、市場で知名度が高い製品やサービスが購買の際の検討リストに選ばれる確率は、そうでない製品の二倍以上になることが知られています。(出典:Yielded Three Key Insights)

営業力強化に関するこの課題は、単に営業の活動を見直すだけでは解決しません。営業のプロセスだけを改善しても、営業力強化、そしてその結果の売上アップにはつながりません。

営業力を強化するためには、営業活動に至るまでのマーケティング活動も同時に見なおす必要があります。担当する営業マンが理由で、購買候補のリストに製品やサービスを選ぶ企業は全体のたった15%程度に留まります(出典:前述のレポート)。

お客さまの購買行動プロセスについて
お客さまの購買行動プロセスはある程度モデル化ができます。BtoCビジネスではAIDMAなど有名なフレームワークがあります。BtoBビジネスについては、「5分で覚える購買行動プロセスの解説〜BtoB営業・マーケティング担当者なら必ず覚えるべき基本事項|カイロスのマーケティングブログ」が参考になります。

2-2.顧客接触を増やして営業力強化

マーケティング活動は、個別に足や電話で展開する営業活動に比べてカバレッジが広くなります。広告やイベントだけでも、一度に多くの見込み客と接触するからです。

見込み客の目にあなたの会社の情報が触れると、あたかもあなたの企業と接している感覚になるようです。その結果、営業担当者が訪問していないにも関わらず、定期的に営業が見込み客に接触でき営業力強化につながります。

知名度の高い企業は概ね1ヶ月に1度程度、テリトリーの見込み客へと営業担当者が接触するようです。しかし、営業リソースが少ないベンチャーや中小企業では、平均して四半期に一度程度見込み客を目指したいところです。

ある中小企業では、営業担当者が毎月訪問する代わりに、マーケティング活動を通じてターゲット顧客への露出を高める取り組みをしました。その結果、2年後に同じ見込み客のアンケート結果では、四半期あたり2.4回、つまりおおよそ毎月見込み客を訪問していると答えたそうです。

このようにマーケティング活動で露出を増やせば、営業マンが実際に訪問している以上の接触があると感じ、自社の営業力強化につながります。

見込み客との接触のために
マーケティング活動の一環として、このように顧客接触を増やすアプローチには、マーケティングオートメーションが便利です。顧客管理からメール予約配信マーケティング分析まで必要な機能が1つのクラウドサービスとして利用できます。

2-3.見込み客の初期の購買行動プロセスを後押しして営業力強化につなげる

BtoBビジネスの場合、見込み客は購買行動プロセスのモデルに従って購買を進めます。BtoBの購買行動プロセスの中で、必ず複数の製品やサービスを比較して実際に購入する製品やサービスを決めます。

BtoBビジネスの特性
BtoBビジネスの購買行動はBtoC(消費者)マーケティングと比べるとユニークな点がいくつかあります。BtoBマーケティングの特徴は「教科書が教えないBtoBマーケティングの実際|カイロスのマーケティングブログ」が参考になります。

営業の現場では、営業力強化のためには、見込み客の価格感度が敏感になっていることを見逃せません。一方でマーケターや経営陣は、技術とイノベーションこそが、見込み客が購入する製品やサービスを決定する最大の要素であると信じています。

この両者の言い分はおそらくどちらも正しいでしょう。

見込み客は、購買にかける投資がどれだけのビジネスメリットにつながるかを検討します。別の言葉で言い換えれば、ROI(対投資効果)です。ROIは見込み客が製品やサービスを選ぶ際の一番の評価ポイントでしょう。

したがって、営業力を強化するためのマーケティング活動では、ROIに関するメッセージを露出するようにしましょう。バリュープロポジションでROIに関するメッセージにすれば、見込み客の購買行動プロセスがスムーズに進む可能性が高くなり、営業力強化につながるでしょう。

バリュープロポジションについて
バリュープロポジションとは、あなたの会社の製品やサービスを通じて提供する価値の確約(コミットメント)です。くわしくは「良いバリュープロポジションを作る5つのコツ|カイロスのマーケティングブログ」でまとめてあります。こちらをご参考にしていただければ幸いです。

3.営業力強化のための5つのヒント

営業力強化のために多くの企業で活用できそうな代表的なヒントを紹介します。今すぐにでも使えそうなヒントがあれば、早速実行してみてください。

3-1.BtoBマーケティングと営業の共通のゴールを設定する

営業力強化を目的として、マーケティングと営業の共通の適切なゴールを設定するのは思ったよりも難しいと言えます。

もし営業力強化を目的としたマーケティングと営業のゴール設定が難航した場合は、マーケティングと営業が全く強調しない場合のシナリオを共有しましょう。数字やデータを盛り込むとより効果が増します。

例えば、下記のような例があります。

営業部門がマーケティング部門で獲得した見込み客を全く利用しないで営業活動をした場合、営業が自ら自社の紹介や製品の概要説明を自分でしなくてはならない。その上、提案書などの作成では顧客ニーズをヒヤリングして資料の作成に入るため1週間の半分以上の時間を割かなくてはならない。営業活動の生産性が大幅に悪化し、売上にも影響が出ることが予想できる。

BtoBマーケティングと営業の共通のゴールは、売上や利益など事業に関係あることを選びましょう。そのゴールを目指して、マーケティングと営業が強調して動き出すでしょう。

何かを進める場合には、必ずゴールを共有して、そのゴールを達成するための課題の洗出しが必要です。

3-2.BtoBマーケティング、営業それぞれのゴールを設定する

営業力強化に向けて事業の共通のゴールを設定したら、次にマーケティングと営業のそれぞれのゴールを設定します。

それぞれの目標にはできるだけ具体的な数字を盛り込み、達成の度合いがわかるように心がけましょう。

個別のゴール設定の例

  • マーケティング:見込み客の獲得数を四半期ごとに10%増やす
  • 営業:今期は目標売上の5,000万円を達成する

マーケティング部門、営業部門でそれぞれゴールを設定すれば、会社の営業力強化を目指して、それぞれが責任を持って行動するようになります。

ゴールは明確に文章などに落とし込むようにして、社内で共有しましょう。

良いゴールの設定のために
ゴールに含む数字はある程度の達成の実現性が求められます。良いゴールは、実際の結果の±30%以内に収まります。それ以上の開きがある場合には、良いゴール設定とは言えません。

3-3.営業力強化のための営業とマーケティングの協力方法を決める

営業力強化を強化するためにマーケティング部門と営業部門がそれぞれ協力するためには、お互いが相手に提供するリソースや労働力を約束します。

営業力強化を目指して営業とマーケティングの協調の約束の例

  • マーケティング:毎月50の新規見込み客情報を営業部門へと提供する
  • 営業:2日以内にその見込み客へとフォローを開始する。その後、20営業日でメールや電話、面会など3回の接触を試みる

会社の営業力強化を目的として、マーケティング部門と営業部門がお互いの協力を具体的に約束すれば、その効果は計り知れません。

3-4. マーケティング部門も営業会議に参加する

営業力強化のためにはマーケティングによる強力な営業サポートは欠かすことができません。

営業力強化のためのマーケティングの強力なサポートを実現するためには、マーケティング担当者は、市場やお客さまのニーズを理解するだけでなく、自社の営業も理解すべきです。

営業レポートの数字や営業会議の議事録を読んでいるだけでは、見込み客や既存のお客さまの理解がなかなか深まりません。

マーケティング担当者も営業会議に参加してみましょう。営業力強化のためのヒントが得られるだけでなく、マーケティング活動のためのネタを見つけるかもしれません。

営業会議から得られるもの
営業会議に参加すると多くのアイデアを得ることができるでしょう。例えば、見込み客の悩みや課題は、あなたのブログ記事、セミナーのテーマなどマーケティング活動のアイデアにつながることが数多くあります。このようにして生まれたコンテンツによって得るリードは、営業活動につながる見込み客の創出に役立ちます。

3-5. 営業力強化はファクト・事実を再優先する

営業力強化という共通の目的を持ったとしても、マーケティングと営業は立場の違いが原因で、お互いに対して不満を持つこともあるでしょう。お互いの不満や改善点の指摘がある場合には、できる限りデータ(ファクト:事実)を活用しましょう。

例えば、マーケティングが獲得する見込み客の質が悪い、と営業活動で感じたら、それを示すためのデータを営業が自ら用意します。決して個人の感覚だけで指摘をしてはなりません。

直感的・感情的な指摘や要求は、感情的な問題提起となり、お互いの信頼や、モチベーションの低下をまねきます。営業力強化という同じ課題を持っているにも関わらず、お互いが足を引っ張ってしまってはいけませんね。

お互いを指摘する場合には、データを活用してファクトに基づいた助言を心がけましょう。

4.さいごに

営業力強化は多くの企業が抱える経営課題の1つです。特にBtoBビジネスの場合には、マーケティングと営業が強調することが欠かせません。

営業力強化で営業部門の改革だけをした場合よりも、マーケティング部門と連携すれば、他社よりも秀でた営業力強化を実現できるでしょう。