営業は会社の重要な機能です。売上が十分に確保できなければ、事業の継続が難しくなります。
市場で十分に差別化できていない製品やサービスであっても、営業のコツをつかみ、他社よりも優れた販売活動ができれば、その市場で十分なシェアを獲得することができます。
一方で、営業のコツをなかなかつかみきれず販売活動が不十分であれば、どんなに素晴らしい製品やサービスも売上が伸びません。販売には営業のコツが非常に重要なのです。
リソースが十分に確保できない中小企業やスタートアップこそ、営業のコツがより重要になります。
1.BtoB営業の基本をおさえよう
BtoBビジネス(対法人取引)の営業のコツについてふれる前に、まずはBtoBビジネスについておさらいしておきましょう。
1-1.BtoB営業の基本的な特徴
BtoBビジネスは、BtoCビジネス(消費者ビジネス)とは異なる特徴があります。あなたが営業やマーケティング担当者であれば、このBtoBビジネスの特徴はしっかり理解しておくことが、BtoB営業の第一のコツです。
BtoB営業のポイントは、以下の4点にまとめることができます。
BtoBビジネスの特徴
利用者と決裁者が異なるケースは多くある 購買は複数人が関わって合理的な判断がなされる 取引金額は数千円から億単位までさまざま 取引きする営業担当者や、費用対効果も購買を左右する要素となる
まずはBtoB営業のこのポイントをしっかりとおさえておいてください。
BtoBビジネスのその他の特徴やまとめは別記事の「教科書が教えないBtoBマーケティングの実際|カイロスのマーケティングブログ」にあります。合わせてごらんいただけると幸いです。
1-2.変化するBtoB営業の現場
BtoB営業の現場では、みなさんもお気づきのとおり、大きな変化に直面しています。
かつてのBtoB営業の商談の現場では、買い手にとって営業担当者が大きな情報源でした。新しい技術や製品の傾向や動向などに関して、売り手側のみに情報が集まっていました。
最近は、買い手も多くの情報を持っています。インターネットの普及、情報社会化によって、買い手も情報を手に入れることができるようになりました。インターネットで情報を調べるだけでなく、ソーシャルメディアや、業界の勉強会・情報交換会などでもさまざまな情報が手に入ります。
そのため買い手は、多くの情報を得て知識レベルを高めてから、BtoB営業の担当者に接触します。時には、得た情報を元に、営業担当者に接触する前に、購入先の売り手を絞り込んでしまうこともあります。
お客さまは自ら情報を得ながら、BtoB営業担当者の知らないところで事業課題やニーズを常に変化させています。この変化の流れに自社が追従しなくては、継続的にBtoB営業で勝ち続けることはできません。
2.BtoB営業しながらビジネスモデルを検証し続ける
BtoB営業が先頭に立って、自社のビジネスモデルを検証し続ける必要があります。BtoB営業担当者は、お客さまに最も接する機会があります。
3-1.BtoB営業がお客さまをよりよく理解するためのテクニック
BtoB営業のコツは、売り込む前にできるだけお客さまと話してみることにあります。
会話の中で、お客さまの事業の課題やチャレンジを探ります。お客さまの課題やチャレンジをより知ることが、市場のニーズを理解して最適なソリューションを提供するだけでなく、市場のニーズに合った良い製品やサービスを作るために必要不可欠であるからです。
BtoB営業の目的は、短期的にみれば売上をあげることですが、長期的にみればお客さまのニーズに合ったサービスを提供できることになります。長期的に良好な関係を重要視するBtoBビジネスにおいて、お客さまのニーズや状況を理解することはBtoB営業の重要な役割になります。
お客さまからできるだけ多くの情報を引き出すために、お客さまとのアポの前に、お客さまの課題の仮説を考えておきましょう。これはBtoB営業のコツです。あらかじめあなたが考えた仮説を少しずつ会話の中で検証することで、BtoB営業担当社がよりよくお客さまを理解できるようになります。
3-2.自社コンセプトとお客さまのニーズのギャップを探る
BtoB営業では、お客さまとの会話の中で、自社の製品やサービスのコンセプトがお客さまのニーズと合っているかを確かめましょう。
もし自社の製品やサービスのコンセプトがお客さまのニーズと合わない場合、その理由をできるだけ詳しく情報を得るように心がけましょう。単純に、「ニーズに合った」「あわない」だけの情報では、自社の製品やサービスの何をどのように改善してよいかわかりません。
ここでもBtoB営業のアポ前に仮説を立てて、アポの際にお客さまとの会話の中から立てた仮説を検証することで、自社の製品コンセプトとお客さまのニーズの一致具合やズレをよりよく理解できるようになります。
3-3.BtoB営業の視点でビジネスモデルをする
お客さま(市場)のニーズと、自社の製品コンセプトがしっかり一致しているにも関わらず、ビジネスモデルとして成り立たない場合があります。
事業レベルの視点では、「そのビジネスモデルは十分に利益をうみだすのか?」という問いに答えることになります。この際に、BtoB営業担当者のコストを見落としがちです。
理想の顧客像はあるものの、その顧客層をBtoB営業の活動でなかなか探しだすことができない場合は顧客獲得に営業コストが極端にかかるため、実現性や収益性の観点からビジネスモデルとして十分とは言えないでしょう。
3-4.お決まりのお客さまに接するBtoB営業では
BtoB営業において、ルート営業で決まったお客さまばかりを訪問する場合は注意が必要です。イノベーションのジレンマにおちいる可能性があるからです。
既存のお客さまの意見ばかり聞いていると、新しい破壊的技術の登場に気がつくのが遅れます。その結果、自社の対応が遅れて、事業の継続が危うくなる可能性があります。
イノベーションのジレンマは、業界のリーダーや売上の大半がある特定の企業からなっている企業が陥りやすい盲点です。くわしくは、「イノベーションのジレンマの仕組みを知ろう|カイロスのマーケティングブログ」にまとめました。
4.BtoB営業現場での心がけ
長期に渡ってBtoB営業で勝ち続けるためには、目の前の売上アップだけを目指すだけではいけません。営業成果を継続的にあげるために、会社や製品の方向性との整合性を合わせる必要があります。
4-1.自社のBtoB営業戦略をよく理解する
BtoB営業は、長期に渡ってお客さまとの信頼を勝ち取る必要があるため、目先の営業売上だけではBtoB営業の現場で勝ち続けることはできません。
BtoB営業でお客さまとの長い信頼関係は、BtoB営業をする上で大きな武器になります。くわしくは「LTV(顧客生涯価値)の意味と計算・算出方法の解説|カイロスのマーケティングブログ」にまとめてありますので、あわせてごらんくださいませ。
BtoB営業担当者の成績が良くても、それが会社の方針とあっていなければ、良い評価につながらないこともあるため、BtoB営業担当者のモチベーションの維持も難しくなります。
新規獲得、既存のお客さまを維持すること、など自社のBtoB営業方針をしっかりと理解し、それに合わせた営業活動を心がけましょう。
もちろん、BtoBの営業現場で得た市場ニーズと会社の方針に大きなズレがある場合には、速やかな報告が必要です。
4-2.理想の顧客像をしっかり理解する
BtoBビジネスでは、お客さまとの長期の関係の中で売上を確保することで、継続的な売上が見込める特徴があります。
お客さまとの継続的に良好な関係を築くためには、理想のお客さま像を定義して、それにできるだけ合ったお客さまに売り込むことです。これは非常に大事な営業のコツです。
会社は理想のお客さま像にあった製品やサービスを継続して開発し、それに合わせたビジネスモデルを構築します。営業が理想の顧客像を正しく理解して、積極的に売り込めば、お客さまが満足してくれる可能性が高く、継続的な売上が自然と見込めます。
理想のお客さま像の定義とその社内共有には、ペルソナが便利です。ペルソナを作ることで、社内でしっかりと理想のお客さま像を共有できるだけでなく、BtoB営業時に便利な売り方などの共有も可能になります。
ペルソナの作り方は、「誰でもできるペルソナの作り方〜マーケティングの現場で活用できる良質なペルソナを作る手順|カイロスのマーケティングブログ」にて詳しく紹介しています。ご参考になれば幸いです。
4-3.新製品を売る時のBtoB営業の注意点
市場やお客さまにとって、新しいコンセプトの製品を売るときには、通常のBtoB営業のアプローチとは異なりますので少し注意が必要です。
新しいコンセプトを持つ製品に興味を示すお客さまは、いわゆるイノベーター理論におけるイノベーターやアーリーアダプターになります。これらは全体のおよそ2割程度です。
イノベーター理論とは、市場に新しい思想や製品が広まるメカニズムを表したモデルです。くわしくは「イノベーター理論|マーケティング用語集」でまとめてございます。
そのため通常のBtoB営業と同様の営業活動の方法では、ほとんどの場合はお客さまに興味を示してもらえず、アポすら取れないことがあります。市場全体の2割のイノベーターやアーリーアダプターに接触しなくてはならないためです。
またお客さまのニーズの把握、製品の機能やビジネスモデルの検証のフィードバックにも工夫が必要です。
BtoB営業の現場でお客さまから得る情報も、必ずターゲット顧客からの情報に着目します。ターゲットとならないお客さまからのフィードバックは、営業戦略や製品戦略に良い影響をもたらしません。
新しいコンセプトを持つ製品は、お客さまにとって新しいものである上に、BtoB営業担当者にとっても新しいものです。そのため、該当する新製品のBtoB営業のコツを知りません。過去の営業のコツはここでは全く役に立たない可能性があることを留意しておきましょう。
ターゲット顧客の設定と、ターゲットとなるお客さまの反応を自社にフィードバックする仮説検証のプロセスがここでも必要になります。
5.継続的なBtoB営業の売上を確保するために
BtoB営業の仕事は、顧客ライフサイクルの上では、マーケティングとサポートの間に位置します。
5-1.BtoB営業とマーケティング部門との連携
BtoB営業では、展示会やセミナーなどで得た見込み客の情報を利用できます。見込み客情報を有効に活用することは、まさにBtoB営業のコツであり、BtoB営業とマーケティング部門の連携が必要です。
5-2.限られたターゲット層へのBtoB営業がサポート満足度を向上する
購入後の顧客満足によって、継続的な営業売上を見込むことができます。特にクラウドや継続して利用していただくサービスなどでは、どれだけ長くお客さまが利用していただけるかによって、売上が大きく左右します。
営業が理想のターゲット像に近いお客さまを獲得していれば、購入後のサポートがスムーズになるだけでなく、サポートのサービスを改善しやすく、お客さまの満足度も高くなる傾向にあります。その逆に、想定外のお客さまが増えると、個別対応が増えてサービスの改善が難しくなるだけでなく、個々のお客さまの要望に対応できなければ、満足度は下がります。
あなたの製品やサービスの理想の顧客像に近いお客さまを探すことが、少し長い視点で見た時の営業のコツであることは間違いありません。
5-3.BtoB営業の失注案件をマーケティングする
BtoBビジネスの場合は、今は予算が無くても来年度になると予算編成や担当者が変わって、商談が再発生することもあります。
いったん失注した案件は、すぐに失注扱いしないで、少し期間の長いリードナーチャリングのプロセスに移行しましょう。できるだけ多くのお客さまと接触しておくことも、営業のコツと言えます。
また、失注が明らかになった場合、「紹介して頂けそうなお客さまがいらっしゃるかどうか」を聞いてみましょう。誰かに紹介していただいた場合、最初からある程度の信頼を得ることができるため、新規の見込み客よりも商談につながる可能性が高くなります。
6.さいごに
スタッフや予算が少ない中小企業やスタートアップでは、ここで紹介したBtoB営業の方法を実践することで、業界のリーダーや大手企業と競争できるようになります。
BtoB営業活動で参考になる部分は、いますぐにでも試してみてください。