グロースハックってどういう意味?〜事例と成功手法〜

2017年09月08日

グロースハックは一時ほど注目されることはなくなりましたが、マーケティング担当者にとっては成果を上げるためには非常に大切な考え方となっています。

グロースハックを単なる流行語(バズワード)として片付けるのではなく、マーケティングの本来の存在意義と考えて、改めてグロースハックの価値をまとめさせていただきました。

この記事を皆さまの業務に役立てていただければ幸いです。

グロースハックとは何か?

グロースハックは、2010年にアメリカの起業家であるショーン・エリスが自身のブログの中で「グロースハッカー」という概念を提唱したのが初めだとされています。


A growth hacker is a person whose true north is growth. Everything they do is scrutinized by its potential impact on scalable growth.

参考:STARTUP MARKETING

(グロースハッカーとはただ成長することのみを目的とする人のことである。グロースハッカーはさらなる成長につながる可能性があるかどうか充分吟味して行動する。)※筆者意訳

グロースハックとは、「サービスの成長につながる可能性があれば、徹底的に分析・改善・実行し、ユーザーの数や質を向上させ続けること」だと言えます。また、グロースハックとは職種のことではなく、「サービスを成長させるための考え方」だと言うこともできます。

グロースハックと一般的なマーケティングは何が違うの?

グロースハックの内容を一見すると、マーケティングの仕事と似ていると思われたかもしれません。では、グロースハックとマーケティングの違いは何でしょうか。

グロースハックは考え方であって、職種や業務内容のことを指すのではありません。

つまりグロースハックとマーケティングは全く別物です。あえてグロースハックとマーケティングの違いを定義するなら、以下のように定義できるかもしれません。

項目 定義
マーケティング サービスが売れる仕組みを作ること
グロースハック サービス自体の機能、設計、戦略にまで改善を加えて、サービスの成長を飛躍させること

グロースハックでは、いわゆるグロースハックだけにとどまらず、サービスの成長のためにサービスの機能や設計にまで踏み込む事もあります。

グロースハックの領域は、サービス開発とマーケティングの領域の重なる部分だと言われることが多いですが、以下の図のようにサービス開発とマーケティングの両方のベースの考え方になると考えるほうが適切です。

サービス開発もマーケティングもグロースハックの考え方を持って、サービスを成長させることが理想です。

グロースハックが注目されるようになった理由

グロースハックがどのような考え方なのかはイメージがつかめたと思います。

では、グロースハックが注目されるようになった理由についてご説明します。理由はとてもシンプルです。

グロースハックという考え方が注目されるようになった背景は、IT・Web業界のサービスのライフサイクルが短くなってきたことです。

製品やサービスのライフサイクルについてもっと知りたい方へ
製品やサービスには流行りも廃りもあり、人間のように「ライフ」があります。そして製品やサービスのライフサイクルに合わせて、企業が取るべき製品のキャンペーンの内容やバリュープロポジション、そして取りうる戦略と市場でのポジショニングが変わります。くわしくは「製品ライフサイクル(プロダクトライフサイクル)とは?」でまとめてございます。ご参考になりますと幸いです。

IT・Web業界のサービスは短い期間で開発することができるために、参入障壁が低くなっています。すると新しいサービスが登場するスピードが早くなります。ユーザーは新しいものにどんどん乗り換えていきます。その結果、一つのサービスが利用される期間は短くなっていきました。特にBtoCのサービスで顕著です。

いくら短期間での開発ができるようになったとは言え、自社のサービスが飽きられたからと言ってすぐに新しいサービスをリリースできるわけではありません。企業は一つのサービスのユーザーを短期間で拡大して、少しでも長い期間、たくさんのユーザーに利用してもらいたいと考えるようになります。

グロースハックの考え方が、短期間でのユーザー拡大・サービスの継続的な成長をさせたいというニーズに応えるものだったのです。

これだけは覚えておきたいグロースハックの有名な事例

では、具体的にどのようなかたちでグロースハックが実践されているのか、代表的な2つのグロースハックの事例を見ていきましょう。

最初にグロースハックの結果のみ紹介します。ここで紹介する2社の事例の具体的な手法やプロセスは、次の章で説明したいと思います。

Dropboxにおけるグロースハック事例

ではDropboxのグロースハックの事例を紹介しましょう。

新規登録ユーザー拡大で、Dropboxはグロースハックの考え方を適応しました。下の図は現在のDropboxのWebページのトップ画面です。非常にシンプルですね。

Dropboxの製品を表現するコピーが左側にあり、右側に新規登録のためのフォームがあるだけです。しかも登録フォームも4つの項目を入力するだけとなっています。

もともとはDropboxのソフトウェアをダウンロードするボタンとDropboxの説明ムービーを見るためのボタンが並んでいる下に、新規登録のリンクがあるというトップページでした。

少しずつシンプルにして「ユーザーにしてほしいこと(=登録)」以外は表示しないようにシンプルにしていきました。これにより、トップページの離脱率を下げたようです。

Twitterにおけるグロースハック事例

次のグロースハックの事例はTwitterです。Twitterでは、非アクティブユーザーをアクティブにさせたグロースハックの事例です。

Twitterでは、新規登録してもそのあと利用がなく、非アクティブになっていくユーザーが多く、アクティブ化したいという課題がありました。そこで非アクティブになっているユーザーのデータを分析してみると、新規登録初日に5〜10人のアカウントをフォローしているユーザーは利用継続率が高いということが判明しました。

そこで、新規登録したユーザーに対してチュートリアルの中で5人フォローさせるという内容を入れました。それにより、アクティブユーザーの比率が高まったという見事なグロースハック事例です。

グロースハックの代表的な手法

上の2つの事例を解説しつつ、グロースハックのフレームワークとデータ分析の手法をご紹介させていただきます。

グロースハックのフレームワーク(AARRRモデル)

グロースハックの代表的な手法の1つ目は「AARRRモデル(アーモデル)」というフレームワークです。

AARRRモデルは、ユーザーの行動で5段階に分けて分析するフレームワークです。

AARRRモデル

  1. ユーザー獲得(Acquisition)
  2. ユーザー活性化(Activation)
  3. 利用継続(Retention)
  4. 収益化(Revenue)
  5. 紹介(Referral)

以上の5段階に分けてから、各フェーズでのデータの分析、改善施策を行ないます。

Dropboxの事例は、Acquisitionを改善した事例で、Twitterの事例は②のActivationを改善した事例となります。

グロースハックにAARRRモデルを使うメリットは、2つあります。

1つ目のメリットは、サービスの成長の指標を全体で俯瞰して捉えられることです。各事業部や担当者はどうしてもそれぞれのKPIにばかり気が取られてしまいます。

例えば、新規獲得ユーザー数ばかり追いかけてしまうと、MAUが落ちていても改善策が取れず、Revenue(売上げ)が落ちたり、継続率が低下したりしていくという推測ができなくなってしまいます。

2つ目のメリットは、サービスの成長にとって何が課題かが分かりやすいことです。

AARRRに分類せずにサービスを成長させようとしても、その場しのぎの改善策しか出てこず、効率的にサービスを成長させることができません。

マーケティングでよく使うフレームワークについて
AARRRモデル以外にもマーケティングでよく使うフレームワークが数多くあります。
マーケティングでよく使われるビジネスフレームワークを無料eBook「ビジネスフレームワーク集25選」にまとめております。無料でダウンロードが可能です。皆さまの業務にお役立てください。

グロースハックに必要なデータ分析の2つの手法

グロースハックを成功させるにはフレームワークを使って、ユーザーの行動をデータで取得して、データを分析することが大切です。
ここでは、グロースハックに必要なデータ分析の手法を2つご紹介致します。

コホート分析とは?
グロースハックに必要なデータ分析の手法の1つ目は、「コホート分析」です。
コホート分析とは、ユーザーを属性や行動履歴などの一定の条件でグループに分け(=セグメンテーション)、グループごとの行動の変化を検証する分析方法です。

ファネル分析とは?
グロースハックに必要なデータ分析の手法の2つ目は、「ファネル分析」です。
ファネルとは、日本語で漏斗といいます。広く集めたユーザーや見込み客が収益化や成約に至る前に、徐々に減っていくことをファネルと言います。

ファネルについてもっと知りたい方へ
マーケティングのファネルに関しては別記事の「パーチェスファネル(マーケティングファネル)の基礎|マーケティングや営業が必ず覚えておくビジネスの基本」でまとめました。合わせてご覧下さいませ。

AARRRモデルで言うと、ユーザー獲得から収益化までの流れの中のどこでユーザーが離脱してしまっているのか、どこから改善を加えるのが良いのかを分析するやり方が、ファネル分析です。

グロースハック実践のプロセス

では、最後にグロースハックを実践する際に参考になる手順をご説明したいと思います。

前提として、グロースハックを実践する際には戦略の策定〜データの計測まで、サービスの改善を加えるレイヤーは問いません。サービスの成長につながるのかどうか、というポイントだけを考えて下さい。

グロースハック実践のプロセスは、サービスを作ることから始まります。

サービスがなければ何も始まりません。ユーザーが使いたくなるようなサービスを作ります。

次に仮説を立てます。仮説の立て方は、サービスをまずはリリースして運用を開始した上で、課題が出てきます。課題が出てきたら、AARRRモデルを使ってどのファネルが最も問題かを特定します。特定したファネルの課題を解決するための方法を考えます。そしてどの数値がどのように変わったら改善とみなすのかKPIを設定します。KPIの設定まで含めて仮説立てです。

グロースハック実践のプロセス3番目は、立てた仮説に基づいて施策を実行し、KPIの数値を見ながら、仮説が正しかったのかどうかを検証します。

グロースハック実践のプロセスの最後は、改善です。仮説が正しかったかどうかを検証した結果、正しければさらにサービスが成長するために改善すべき方法を新たに探します。

仮説が間違っていて、KPIに改善が見られなかったり、KPIは改善したのに根本課題が解決されなかったりした場合は、新しい仮説を立てます。

また、時には施策の改善にとどまらずサービスや機能そのものに対しても改善を必要とする仮説を立てることもあります。

何度も繰り返しますが、グロースハックのポイントは「サービスの成長につながるかどうか」のみです。サービスの成長につながるのであれば、サービスや機能そのものへの改善提案も必要です。

以上のように、サービス設計から改善までを可能な限り短い期間で繰り返して、サービスを効率よく成長させます。短い期間で、可能な限り多くのユーザーを獲得し、可能な限り長く利用してもらうためにはグロースハックが必要なのです。

グロースハックはあらゆるビジネスパーソンが身につけるべき考え方

グロースハックの概要から実践のプロセスまで、ご理解いただけたでしょうか。

勘の良いかたはお気づきかもしれませんが、実はグロースハックはあらゆるビジネスパーソンが身につけるべき考え方なのです。

マーケティング担当者やサービス開発担当者のみが身につけるべきなのは当然です。同じように営業担当者も、カスタマーサポート担当者もお客さまと接点を持つのだからお客さまの声やデータを持っているはずです。業務の中で得たお客さまの声からサービスにおける課題を見つけ出し、仮説を立てて、検証し改善することはどんな業務についている人でもできることです。

グロースハックを流行り言葉として終わらせず、ぜひ業務の中で実践していっていただければと思います。

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