例で学ぶ!営業戦略を実現する法人営業部の仕組み
営業戦略を実現するためには、良い製品に加えて、営業担当者をいかにうまく活用できるかにかかっています。
飛び込み営業も有効な営業手段の1つです。比較的価格が安い製品を何とかして売り込み、1度でもいいから取引きの実績を作っていただくことが重要である業種には飛び込み営業が有効です。
しかしほとんどの法人営業では、すべてのお客さまに同じ飛び込みスタイルの営業をする場合は、あまり効果が期待できません。それはなぜでしょうか?
営業戦略が欠かせない法人営業のやり方があるからです。長期にわたって安定した売上を見込む法人営業の営業戦略の例をみながら、深堀りしていきましょう。
1.法人営業の営業戦略で最も大事なこと
法人営業では、お客さま企業の良きビジネスパートナーとして、長期にわたる良好な関係を築くことを営業戦略としてかかげることが一般的です。法人営業では、LTV(顧客生涯価値)を最大にしながら、自社の事業を成長させます。
あるお客さまあたりの売上です。一時的な売上ではなく、そのお客さまから期待できる長期にわたって見込める将来の売上を含む見込みの売上です。くわしくは弊社のブログ記事「LTV(顧客生涯価値)の意味と計算・算出方法の解説」が参考になります。
法人営業の営業戦略における売上は、法人営業で達成すべきゴールです。しかし、法人営業の営業戦略は、販売する製品やサービスによって異なります。販売する製品やサービスによってお客さまとのつきあいかたが違うためです。
もちろん、お客さまとのつきあいかたの違いによって、当然営業担当者に必要なスキルは異なってきます。
例えば、法人営業で安いプリンターの販売で他社製品からの買い替え注文をねらう場合と、長期に渡ってお客さま企業の経営陣から大口契約を取る場合では、当然必要な営業スキルは違います。
営業売上は営業担当者の配置やスキルが大きく影響を及ぼします。
したがって、営業戦略を作る上では、売上目標とそれを達成するための営業担当者の配置、それぞれに必要な営業スキルを明確にしておく必要があります。
2.ここをおさえておけば、法人営業担当者が営業戦略を実現できる
お客さまのさまざまなニーズを把握し、適切に対応することが営業には欠かせません。お客さまのニーズを満たし、いかにお客さまに満足いただける営業対応できるかが、営業担当者の手腕と言えます。
法人営業の営業担当者は、現場から経営陣にいたるまで、さまざまなレベルでお客さま企業に入り込み、それぞれのニーズを満たす最適な対応ができるふさわしい「道具」を用意しておくことが営業担当者の使命です。
この「道具」を使いこなせる知識やスキルを自ら取得し、お客さまのニーズやビジネスをていねいかつ素早くサポートできれば、長期的にみた売上をしっかりと確保できます。
営業活動で取り扱う製品やサービス、営業戦略によって、営業担当者が使いこなすべき「道具」と「道具」を使いこなす知識やスキルが変わります。
では、どのような「道具」を用意すれば、営業戦略上の営業売上を最大にできるでしょうか?
3.常に営業売上が安定するために組織を変更する
同じ営業の「道具」を用意しても、それを使いこなすことができる営業担当者を適切に配置して顧客ニーズに応えなくてはなりません。取り扱う商材によって、顧客のニーズと営業戦略が異なるため道具の使い方とそれに必要な営業担当者にスキルが異なります。
例えば営業戦略が異なる2つの事業、プリンターの販売とお客さま経営陣による長期の戦略パートナー契約が必要な事業では、明らかに営業担当者にとって必要な「道具」は違います。
3-1.営業戦略の違いにおける「道具」の違いの例
プリンターの販売の営業戦略に必要な「道具」とその「道具」を使いこなす目的は、きめ細やかなサポートによって長期に安定した売上をつくりだすことです。
プリンターのトナーや紙、メンテナンスなどプリンターを使い続けるにあたってお客さまに必要なことを、自社のサポート部門が解決し、長期に渡る安定した売上をつくります。
一方で戦略パートナーとなるような大型案件を中心とする営業戦略では、営業現場における素早い意志決定が必要です。
そのため、営業現場に意志決定の権限を持たせなくてはなりません。つまり、営業現場の意志決定が営業戦略に必要な「道具」になります。
3-2.営業戦略によって営業担当者に必要なスキルが異なる
このように営業戦略によって、営業が持つべき「道具」が変わってきます。また、「道具」によってそれを使いこなす営業担当者に必要なスキルも変わります。
先ほどの営業戦略の違いによる例では、プリンター販売にはサポート部門でした。営業担当者は、サポート部門を活用しながら継続した売上を見込む一方で、あらたな需要やニーズをみつけだし売上をのばすためのスキルが必要です。
戦略パートナーを締結する営業戦略では、自社の経営に最適な判断をすばやく下すスキルが営業担当者に必要となります。
このように営業戦略の違いによって、営業担当者にとって必要なスキルは、ある程度共通する部分があるものの、基本的に大きく異なります。
したがって、営業戦略では、営業担当者のもつスキルが異なる案件やお客さまを、同一の営業担当者が持つべきではありません。営業機会を取りこぼす可能性があるだけでなく、全てのスキルに長けた営業担当者を育てることはとてもむずかしいでしょう。
3-3.営業戦略を実現する営業組織の例
できるだけ多くのお客さまのニーズに、効率よく効果的に対応できるような営業チームを編成しておけば、このような問題をさけることができます。
営業チームは、営業戦略にもとづいて例えば、「繰り返し受注型営業戦略」「他社からの乗り換え獲得の営業戦略」「新規顧客獲得の営業戦略」「戦略的提携の営業戦略」と少なくとも4つのタイプにわけることができます。
4.主な営業戦略における営業アプローチの例
以下、それぞれの営業戦略の例に基づいた営業チームの役割と使命について説明していきます。
4-1.繰り返し受注型営業戦略の例
繰り返しの受注によって売上を増やす営業戦略では、既存のお客さまが引き続きあなたの会社から同じ製品の繰り返し発注してくれることを目指します。
この営業戦略では、営業担当者はお客さまから繰り返しの発注してもらうために、お客さまがあなたの会社に対して良い印象を抱かなくてはなりません。同時に、あなたの会社が、お客さまから非常に高い信頼を勝ち取ることが必要となります。
一方で営業担当者は、お客さまの需要のタイミングを正確に予測し、需要のタイミングがきたら適切にコンタクトしなくてはなりません。営業担当者が気を抜けば、競合企業がお客さまを横から奪い取ってしまいます。
繰り返し受注型の営業戦略では、例えば、お客さまが求める製品やサービスの仕様、納期、価格にきめ細かく対応し、競合企業が入り込むスキをできるだけ少なくします。
あなたの会社が製品やサービスの販売に加えて、サポートサービスを提供していれば、競合企業の入るスキを小さくできるため、圧倒的に有利になります。
繰り返し受注型の営業戦略におけるサポート部門の役割は、お客さまの相談窓口となって繰り返し注文につながりやすい関係づくりを進めることです。
サポートサービスの中では、見積もりを作成や内容の説明をお客さまにしたり、条件が合致しない場合には営業担当者に変わって調整したりする、まるで営業のような仕事も受けます。
必要に応じて営業担当者に連絡するなど、サポート業務の中から営業引き合いをみつけだすことができます。サポート部門が絶えずお客さまを観察しながら、お客さまのニーズをしっかりと知ることができれば、営業戦略を実現するための顧客の需要を確実にし、売上アップに貢献できます。
このようにサポート部門がうまく機能すれば、営業担当者は本来の営業活動に専念できるため、繰り返し注文の受注率もよくなるはずです。
4-2.他社からの乗り換え獲得の営業戦略の例
これまで他社の製品を使っている企業に自社の製品を使ってもらうために新規発注を獲得する営業戦略を、他社からの乗り換え獲得の営業戦略としています。
他社からの乗り換えをより多く獲得する営業戦略を実現するためには、競合他社の営業活動とマーケティング活動の両方の動向に注意を払わなくてはなりません。
競合企業の動きをしっかりとおさえておけば、他社製品の不具合発生時や、不十分なサービスであった場合には、すかさず営業活動で乗り換え先の候補として提案ができます。
他社からの乗り換えを狙う営業戦略では、社内に競合情報を収集する部門を作って営業部門にいろいろなサポートを提供している例もあります。この部門では、お客さまの購買動向や競合他社の製品やサービスの不備や弱点、新製品情報や新技術の情報を調べ、自社の優位性を洗い出しています。
4-3.新規顧客獲得の営業戦略の例
新規顧客獲得の営業戦略では、まだ満たされていないお客さまのニーズを見つけ出し、自社の製品やサービスによって満足していただくアプローチが必要です。
新規顧客獲得の営業戦略は、単に製品やサービスを1回だけ購入してもらうことが目的ではありません。長期にわたってお客さまと良好な関係を築きながらLTVを最大にします。
そのため、新規顧客獲得の営業戦略を実現するには、お客さまのビジネスとあなたのビジネスを戦略的な観点で分析し、自社の製品やサービスを提供することによって、お客さまのビジネスにどのような効果をもたらすかを明らかにします。
新規顧客獲得の営業には、営業担当者だけでなく、技術、マーケティング、開発部門、法務や財務などの部門からそれぞれの知識をあつめて、新規顧客獲得の可能性をしっかりと検討した上で提案書を作ります。
営業担当者は、この資料をもって、お客さまの購買担当者や経営陣などに自社の製品やサービスを売り込んでいきます。
営業担当者は、資料作成のために必要な分析作業にたくさんの時間を使わなくて済むだけでなく、専門知識をもつ社内の担当者とも信頼関係が築けます。
お客さまをしっかりと分析しておけば、商談時のお客さまからの予算や仕様などにおける要求の背景を理解しやすく、柔軟な営業対応が可能となり、商談のクロージング率アップにつながります。
4-4.戦略的提携の営業戦略の例
戦略的提携を中心とする営業戦略は、各案件のみ込み売上額は大きいもの案件のクロージング率の見積もりが難しいです。
戦略的提携の営業戦略では、お客さま自身も気づいていないニーズを見つけ出し、新しいソリューションを開発する活動が中心となります。
この営業戦略におけるソリューションの開発は、売り手が一方的に行うのではなく、お客さまを巻き込んで共同ですすめることがほとんどです。
この営業戦略を推進するためには、中間管理職の権限だけでは解決できない課題が多く発生します。例えば、予算規模や投下する社内リソースなど、部署や部門を超えた経営判断が必要となることもあります。そのため、営業部門がある程度の意志決定の権限を持つか、経営陣がプロジェクトを身近でバックアップしなくてはなりません。
戦略的提携の大型案件中心の営業戦略をとる企業では、営業担当者やプロジェクトの参加者全てに自律を求めます。経営の視点をもって物事を判断したり、意志決定をしたりするスキルが必要です。営業担当者の自律性がなければ、会社を代表してお客さまとの交渉や迅速な意志決定ができません。
5.さいごに
営業担当者が単に製品を売り歩くだけの営業戦略は、長期にわたってお客さまとの良好な関係を築く法人営業では十分とは言えません。
営業戦略の元に最良のチームを形成し、メンバーがさまざまなビジネス機会をみつけ、開拓することをミッションとできれば、競合他社よりも有利になることは間違いありません。さらに、競合他社や市場、お客さまが思いもつかないような新しい事業機会の創出にもつながります。