リバース・ポジショニングとは?
リバース・ポジショニングは、製品ライフサイクルのコンセプトを覆す、マーケティングのポジショニング手法です。
製品ライフサイクルでは、製品は釣鐘状の曲線(ベル・カーブ、製品ライフサイクル曲線)を描いて、市場への投入から、成長、成熟、衰退へと体系的に推移します。製品ライフサイクルは、BtoB、BtoCにとらわれず多くのマーケターが活用するフレームワークであり、製品のライフサイクルの各段階に応じて、自社の製品のポジショニングを設定します。
リバース・ポジショニングは、製品ライフサイクルにとらわれない考え方です。
リバース・ポジショニングとは
リバース・ポジショニングとは、製品ライフサイクル上の成熟期に位置づけられる製品に期待される特徴を取り除き、意外性の高い特徴を付与して、その製品を成熟期から成長期へと戻すポジショニング戦略です。
リバース・ポジショニングを採用する企業では、成熟期にある製品やサービスには当然と思われている機能や効用を切り捨て、そして一旦製品をスタートラインに戻した後、高度化した価値を備えた製品に備わっている特徴の中から、1つか2つを選択し、余分な機能を削ぎ落した当該商品に付け加えます。
成熟期にある製品やサービスにこれまでとは異なる機能や効用を組み合わせることで、その製品やサービスは、買い手の認知や評価を変えてしまい、既存市場内で新たなポジションを取ることができるようになります。そのポジショニングによって、成熟段階から成長段階へと、製品ライフサイクル曲線を逆方向に進みます。
リバース・ポジショニングの事例
リバース・ポジショニングで最もよく知られた事例がIKEAです。
IKEAは、家具小売のグローバル企業です。日本にも急速に出店しながら、高業績をキープしています。成熟市場にある家具市場のIKEAの高業績を支えている一つの理由にリバースポジショニングがあります。
家具は従来、高価で丈夫な家具を大切に長く使っていました。家具業界は成熟段階に属するプレイヤーと同様、商品の種類を拡大してきました。ほぼ同様の家具でも、色違いや寸法違いの商品がたくさん揃っています。
家具小売店には、多くの店員が配置され、家具のサイズを測るのを手伝ったり、あらゆる提案をしていました。そして、古い家具と引き換えに新しい家具を自宅まで配送するサービスも当然でした。一生ものの高価な家具を買うスタイルでは、ある意味当然の付加価値サービスです。
しかしIKEAは、このように家具業界でこれまで当然と思われていた常識を打ち破り、廉価でスタイリッシュな品揃えの家具を取り揃えています。
店舗をみてみると、IKEAでは店内にほとんど店員がいません。商品の種類は基本的なユニットに限定され、買うときには組み立てもしていない重い箱を自分で車に積み込んで持ち帰らなくてはなりません。家具は自分で組立てなくてはならず、耐久性もあまり期待できません。IKEAでは、家具は生活シーンが変わるにつれて何度も買い換えるべきであると提案しています。
リバース・ポジショニングを実践するIKEAでは、これまでの家具業界で当然と思われていた特徴や効用をこのようにバッサリと切り捨てています。
しかしながら、家具や売り場の雰囲気が典型的な安売り店とは全くことなります。IKEAの家具のデザインや売り場は、明るくモダンな雰囲気があります。家具だけでなく、カフェや家庭用品まで、安くてモダンなデザインの品物が売られています。これらの同業の他店ではなかなかてにはいりません。楽しく心地よい買い物が楽しめます。
このようにIKEAは、リバース・ポジショニングを使い、従来の家具店と明確に区別して市場を再編し、若者から家族連れまでの広い顧客層を惹きつけることで、新しいセグメントを創りだしました。
まとめ|リバース・ポジショニング
リバース・ポジショニングは、成熟期にある製品やサービスから、これまで当然と思われていた機能や効用を取り除き、新たな属性を加える事によって、これまでとは異なるポジショニングを取りながら、製品ライフサイクルを成熟期から成長期へと逆行します。
あなたの会社でも成熟期にある製品には、リバース・ポジショニングを検討してみましょう。
リバース・ポジショニングは、サービスに適しています。IKEAも製品にリバース・ポジショニングを適応しているように見えますが、実は家具の付帯サービスにリバース・ポジショニングを適応しています。