マーケターなら誰でも知っているマーケティングの代表的なフレームワーク、「マーケティングミックス」はおそらく誰でも知っているでしょう。数多くのマーケティングの教科書に登場する有名なフレームワークです。
マーケティングミックスは1960年代に登場してから、半世紀にも渡ってマーケティングの重要なフレームワークとして使われてきました。
製品中心の概念から、お客さま中心の概念へマーケティングがシフトするにつれてマーケティングのフレームワークも進化を続けるべきです。
マーケティングミックスの概要
マーケティングミックスは4Pとしても知られる、多くのマーケターが知っているフレームワークです。みなさんも一度は耳にしたことがあるでしょう。
マーケティングミックスとは
マーケティングで言う4Pはぞれぞれ、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(広告・宣伝)の頭文字を取った、マーケティングで実施する施策を示すフレームワークです。4Pのフレームワークは、マーケティング計画・戦略立案、実行時のレビューなどの場面でよく利用します。
マーケティングミックスの詳細は、「マーケティングミックス(4P)かしこく使う7つの秘訣」が参考になります。合わせてごらんくださいませ。
マーケティングミックスだけでは差別化が難い時代に
マーケティングの4Pは1960年代から、約半世紀にも渡ってマーケティングの主要なフレームワークとして利用されてきました。しかし、市場にモノや情報があふれるにつれて、マーケティングの4Pのフレームワークだけでは、ビジネスに有効な計画や戦略立案をしにくくなってきています。
例えば、ある技術によって自社の優位性が保たれてきた製品があるとしても、あっという間に価格の類似した製品が登場するなど、製品の優位性は非常に早いスピードで陳腐化するようになってきました。利益率の高い市場ほどこの傾向にあります。
一方で、海外から非常に安い「価格」の代替品が国内市場にも参入してくることもあります。技術で優れた製品でも、圧倒的な優位性を長きにわたって確保することがどんどん難しくなっています。
差別化はビジネスで勝抜くための基本であるものの、マーケティングの4Pの要素である「製品」や「価格」だけでは差別化し続けることが困難になりました。
マーケティングの4Pのフレームワークを見直す時期に差し掛かってきました。。
マーケティングの4PはBtoBマーケティングに不向きなのか?
マーケティングミックスというフレームワークを使って、自社の商品の技術や製品で差別化することは、以前よりずっと難しくなりました。
技術はあっという間に陳腐化してコスト競争になりやすい
技術はあっという間に陳腐化し、あっという間に製品の値段が下がってしまいます。差別化が難しくなれば、当然、コスト競争となりやすくなります。
コスト競争を避けて、自社の利益をしっかりと確保したい企業は、お客さまがより高く感じる価値や、これまでに無かった価値を創造することにより、他社との差別化を図ろうとしています。
変化するBtoBマーケティングの手法
BtoBマーケティングや法人営業の現場では、お客さまの悩みを解決するソリューションによるアプローチで、他社との価格競争を避けて差別化競争をしようとしています。ソリューション営業と呼ぶこともあります。
ソリューション営業は、モノというよりもお客さまの解決策に着目する営業スタイルです。くわしくは「ソリューション営業実践のコツ」にまとめました。合わせてごらんくださいませ。
BtoBマーケティングにおけるソリューションによるアプローチでは、必要に応じて自社の製品を2つ、3つ組み合せたり、製品に加えてサービスを提供したりするなどの方策を取ることが多くなっています。
お客さまのニーズに着目したフレームワークが必要になった
ソリューションによるアプローチを取るBtoBマーケティングや法人営業の現場では、マーケティングの視点が市場(お客さま)に移ってきました。製品の技術や品質が高ければ売れるのではありません。お客さまのニーズが原点となっています。
このため、製品や価格を中心的な要素とするマーケティングの4Pのフレームワークは、ソリューションを中心とするBtoBマーケティングにおいては、かつてよりも上手な計画や戦略をうまく導き出すことが難しくなってきたと言えます。
BtoBマーケティングでは、マーケティングの教科書通りの4Pのフレームワークではうまく対応できなくなってきました。
マーケティングの4Pに変わるBtoB向けの新しいフレームワーク
マーケティングの4Pのフレームワークに変わる新しいフレームワークは、あちこちで紹介されるようになってきました。
Harvard Business Reviewの1,2月号で、考案されていた、BtoB向けの新しいフレームワークが「SAVE」が非常に興味深いです。残念ながら本書は英語ですが、機会があればぜひ呼んでいただければと思っています。
ここでは、マーケティングの4Pのフレームワークに変わる「SAVE」について簡単に紹介します。
製品(P)からソリューション(S)へ
SはSolution(ソリューション)です。マーケティングの4PのフレームワークにおけるProduct(製品)の代わりとなります。
製品中心の思考(プロダクトアウト)から、市場やソリューション(顧客のニーズ)を(マーケットイン)に視点が大きくシフトしています。BtoCマーケティングでもこの傾向はありますが、BtoBマーケティングの方がこの傾向が強くなっています。
当然のことながら、マーケティング担当者は、製品よりも市場・ソリューション、そしてお客さま思考となる必要があります。
流通(P)から接触(A)へ
AはAccess(接触)。Place(流通)の代わりになります。
個別の商品を買う場所や販売チャネルという従来の流通の考え方から、お客さまが購買に至るまでのあらゆる購買行動プロセスに合わせてタッチポイントを設計するアプローチへと変わってきています。
BtoBマーケティングで何度も登場してくる購買行動プロセスについては「5分で覚える購買行動プロセスの解説〜BtoB営業・マーケティング担当者なら必ず覚えるべき基本事項」でまとめました。詳しく知りたい方の参考になればと思っております。
インターネットが普及した現代に見合った考え方と言えます。
価格(P)から価値(V)へ
VはValue(価値)であり、Price(価格)の代替となります。
製品の生産コスト、利益率、競合への価格など、とにかく価格(P)にこだわってマーケティングメッセージを展開するより、お客さまの価値にいかに貢献できるかを明確にするアプローチは最近の動向であると言えます。
BtoBマーケティングでバリュープロポジションが大切である理由でもあります。
バリュープロポジションは日本語で言えば「提供価値」になります。くわしくは「良いバリュープロポジションを作る5つのコツ」が参考になります。
広告宣伝(P)から教育・啓蒙(E)へ
EはEducation(啓蒙・教育)、Promotion(広告・宣伝)の代わりとなります。
BtoBマーケティングでは、業界のトレンドなどから自社の経営課題を認識し、それらに期間、範囲と予算があいまって自社の課題になり、売り手からすればやっと案件になります。
お客さまの購買行動プロセスを加速するのは、広告・宣伝ではなく、啓蒙や教育であることは明らかです。
さいごに
BtoBビジネスでは、マーケティング計画、戦略を考える際、マーケティングの4Pのフレームワークがうまく機能しないときがある。その場合には、このSAVEのフレームワークを試してみてはいかがでしょうか。
本コンテンツは、2013年1月29日に執筆したものを編集しました。