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カスタマーエクイティを高めて顧客を囲い込む7つの戦略

カスタマーエクイティを高めて顧客を囲い込む7つの戦略

市場が成長している業界を除けば、新規の顧客を開拓し続けて売上を継続的に伸ばすことが難しくなってきました。

安定している業界では、既存の顧客をつなぎとめ長期にわたって友好な関係をつくることが、企業の喫緊の課題です。このような背景から、多くの企業では顧客を囲い込む戦略も重視しています。

既存の顧客をしっかりと囲い込めれば、顧客の継続的な購買によりカスタマーエクイティが大きくなり、利益率の高いビジネスモデルを実現できる可能性が高くなります。

世の中には顧客を囲い込む方法は数多く存在します。今日は顧客囲い込みの戦略のうちの代表的な7つのアプローチを紹介します。

1. 抱く好意や親しみで顧客を囲い込む

自分のことをよく知っている店員がいる店で買い物をしたりサービスを受けたりすることはよくあります。いわゆる「なじみの店」に通い続けたり、注文をしたりする購買行動です。

このように好意や親しみという感情が増すことによって、顧客として囲い込まれることは非常によくある話です。

BtoBビジネスでも、昔からお付き合いのある会社や特定の営業担当者に好意や親しみを感じて継続して購買したり、対応の良さや営業担当者に好意を感じて最初は話を聞くくらいに止めておこうと思ったのに最終的には購入してしまうことがあります。この顧客心理を活用したアプローチで顧客の囲い込みに成功している企業があります。

この顧客囲い込みの戦略は、企業や営業担当者と長期にわたる関係を持ち続けたり、製品やサービスを利用し続けることによって安心感が高まり、無意識に代替サービスへのスイッチングのリスクを避ける行動をとるようになるというヒトの心理を利用した方法と言えます。

2. 仕組みを利用して顧客を囲い込む

この顧客の囲い込みの戦略では、もっと得をしたい、損をしたくない、元を取り戻したいというヒトの心理をくすぐる仕組みを活用します。

この顧客囲い込みの戦略を例をあげてみてみましょう。

会員制のサービスでは、入会金というサンクコストを先払いさせて、継続して購入しないともったいないというヒトの心理で顧客を囲い込みます。ゴルフ場の会員権、アマゾンのプライムサービス、などがあります。せっかく買うなら・・・ということで、再び購入してしまうことはありませんか?
参考 サンクコスト(埋没費用)とは?|カイロスのマーケティングブログ

航空会社などで採用されているマイレッジサービスもこの例に該当します。もっと得をしたいという心理が、提供する仕組みによって働いています。代替方法によっぽどメリットが無い限り、同じサービスを選んでしまいます。

購入金額に応じてポイントを付与して、一定のポイントが貯まれば特典を得られる仕組みです。同様な仕組みはクレジットカードにも採用されています。また、家電量販店のポイントサービスもこの心理をうまく活用していると言えます。

3. 利用のしやすさで顧客を囲い込む

すぐに気軽に利用できる利便性を活用して顧客を囲い込むアプローチがあります。

例えば、毎日職場に入り込む弁当屋やヤクルトの販売、何でも手に入って翌日には届けてくれる通信販売など、利用のしやすさを武器にしたサービスで顧客を囲い込む企業がいます。

最近流行り始めているサブスクリプションコマースもこの顧客囲い込みの例といえます。

4. 知名度やイメージで顧客を囲い込む

業界のリーダーや著名なブランドイメージをもつ製品は、この顧客囲い込みの戦略でシェアを維持し続けています。

買い手は知名度やブランドイメージきっかけにして購入するため、代替品を探すのが面倒になります。

一方で、この顧客囲い込みの戦略にはリスクもあります。

企業やブランドのスキャンダルによって、一気に顧客が離れる場合があります。最近でも異物混入によって業績を著しく落とした企業があります。

知名度やブランドイメージを利用した顧客囲い込みの戦略では、ブランドの知名度やイメージを維持する努力だけでなく、その知名度やイメージに相応しい企業体質をつくらなくてはなりません。

5. 学習効果で顧客を囲い込む

例えば今まで行ったことのないスーパーで、何がどこに置いてあるか分からず思ったよりも買い物に時間がかかってしまった経験はありませんか?

いつもの製品やサービスに十分に慣れてしまうと、他の製品やサービスを利用したいと思わなくなります。このように既に利用者が学習した知識や経験などがスイッチングコストとなって顧客を囲い込みます。

提案型営業や、データベースを活用してきめ細かいセグメンテーションのリードナーチャリングに代表される自分の行動や嗜好に合わせたマーケティング活動も学習効果を活用した顧客囲い込みのアプローチと言えるでしょう。

6. 利用者の数で顧客を囲い込む

利用者が多くなればなるほど、そのサービスの価値が高まることがあります。最近のソーシャルネットワークサービスなどは典型的なこのタイプの顧客囲い込みの例です。

利用者の数で顧客を囲い込む戦略はサービスだけに留まりません。

かつてのビデオの規格、VHS vs ベータ、OSのソフトやビジネスアプリ、ゲームのハードウエアなど、製品でも利用者数で顧客を囲い込む戦略があります。

利用者数で顧客を囲い込む戦略でアプローチする製品は、一般的に他の製品との互換性に乏しいため、一度利用するとなかなか他の製品に乗り換えができなくなり、スイッチングコストを非常に高くします。

7. ラインナップで顧客を囲い込む

いくつかのラインナップを用意して、顧客を囲い込む戦略があります。いわゆる製品シリーズです。

最近のアップルでは、デスクトップとノートパソコン、スマートフォン、タブレット、など次々にシリーズの製品を揃える方がいます。また新しいスマートフォンに買い換えるなど、時間がたつと新しい製品を購入するケースもすくなくありません。

このようにシリーズである程度そろえてしまうと、過去の投資を無駄にしないよう次々にシリーズ製品を買ってしまうヒトの心理を活用しています。

コミックを途中まで買ったらどうしても最後まで揃えたくなる心理も、この顧客の囲い込み戦略の典型といえます。電子書籍のコミックでは、最初の1,2巻を無料で提供しているのは、まさにこの顧客囲い込みの戦略を実践しているといえます。

まとめ〜カスタマーエクイティを高めて顧客を囲い込む7つのアプローチ

顧客との関係を活用して、いかに長期に渡る良好な関係を構築してカスタマーエクイティを高めるかは、継続的に利益を確保したい企業の課題です。

このような関係性を構築する狙いでCRMを導入する例をみかけます。しかし実態は、コールセンターの設置やSFAの導入、顧客データベースの構築に終始しがちで、単なる情報システムのあり方の議論をしているようにみえてしまいます。

本当に顧客を囲い込んで、継続的な利益を確保するためには、情報システムの導入と構築にとどまらず顧客視点で、顧客囲い込みの戦略を検討しなくてはなりません。