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【解説】顧客ロイヤリティを向上させるための手順

顧客ロイヤリティ

顧客ロイヤリティは、多くの企業が積極的に取り組んでいる経営かつマーケティングのテーマです。

顧客ロイヤリティを向上するため、顧客管理やリード管理などのITの仕組みを導入する企業が増えています。これらのツールを導入してあらゆる顧客データを獲得し、企業が顧客のことをもっと良く知ろうとしています。

十分な顧客データがあれば、より精度よく顧客ロイヤリティを高めるための仕掛けができるようになるはずです。しかし、どうも現実は違うようです。

あなたの顧客ロイヤリティ向上キャンペーンの現場と実態

顧客ロイヤリティを向上するマーケティング活動は、多くの企業で取り組んでいるマーケティングの課題です。ごく一般的なマーケティング活動といえます。

マーケティングオートメーションなどの顧客ニーズや傾向を把握するソフトウエアやマーケティング手法によって、これまで以上に企業と顧客が友好な関係を築くための環境が整ってきました。

企業が積極的に顧客ロイヤリティの向上に取り組む理由は、顧客との関係が良くなればなるほど、販売にかかるコストが下がり、売上が増加するからです。その結果、利益率も改善します。

必ずしも成功しない顧客ロイヤリティ向上のキャンペーン

顧客ロイヤリティの向上を狙う企業のすべてが、お客さまとの関係が改善しているとは言えません。

顧客ロイヤリティの向上を狙う企業は、ライバル企業以上に、顧客のありとあらゆる情報を集めて、より多くの顧客ニーズや潜在欲求を満たす製品やサービスを提供しようと必死です。

しかし、この顧客ロイヤリティの向上のためのアプローチは、必ずしも顧客が喜ぶ結果にはなっていない現状があります。

囲い込みで顧客ロイヤリティは向上するか?

ここで少し、みなさんの生活における買い物のシーンを考えてみましょう。お昼ごはんをコンビニに買いにいくシーンを想定してください。

今やコンビニでも、多くの商品であふれかえっていて、お昼ごはんと言えども、何を買おうか悩んでしまいます。

おにぎりや飲み物を買おうとしているだけで、コンビニの店員さんがあなたの後を付け回して、あれこれと説明したり、「今日はどのようなものをお探しですか?」などと質問したりしてきたらどう思いますか?きっとあなたは我慢できなくなって、お店から出てしまうでしょう。

このような経験をしたら、明日も同じコンビニに行きたいとは思いません。顧客ロイヤリティや顧客囲い込みとは大きくかけ離れています。

マーケティング担当者は、このようにいろいろな方法で顧客を囲い込むための施策の立案と実行に必死ですが、マーケティング担当者の思いとは逆に、顧客が逃げていくという皮肉な結果を招いています。

顧客ロイヤリティ向上キャンペーンによくあくある失敗

顧客ロイヤリティの向上を狙うキャンペーンでは、顧客との良い関係がもたらすメリットや事業の利益に目がいってしまい、全体が見えなくなりがちです。

その結果、すぐに売上アップにつながる潜在顧客を探すことに時間を費やし、本来あるべき顧客との良い関係を構築するという、顧客ロイヤリティ向上のための基本を忘れてしまいがちです。

顧客ロイヤリティの向上につながる、顧客との良好な関係を築くためには、あなたが提供する製品やサービス、あなたの会社に対する顧客の信頼や共感を得ることが必要です。今すぐ売上につながる潜在顧客を探しだして囲い込むだけでは、高い顧客ロイヤリティは当然見込めません。

このことは、顧客ロイヤリティ向上には欠かせない、非常に重要かつ簡単なことですが、なかなか実行できていません。

顧客ロイヤリティ向上キャンペーンという名の顧客の囲い込みから脱却せよ

顧客ロイヤリティの話には「顧客」、つまりあなたの「相手」がいます。相手もあなたに交換を抱いていただくなくては、顧客ロイヤリティはありえません。相手のことを無視して顧客ロイヤリティを向上したいなどとは、いささか虫の良い話です。

企業は顧客ロイヤリティの向上に積極的です。しかし、あなたが思っているほど、顧客は企業との良好な関係の構築に積極的ではありません。

興味のないメッセージであふれかえる現状

企業の顧客ロイヤリティ向上のキャンペーンで、潜在的な顧客を勧誘する一方で、既存の顧客との関係を改善するために、自社中心の視点のメッセージを送り続けています。つまり、顧客ロイヤリティ向上のキャンペーンという名目で、「顧客囲い込みキャンペーン」を実施しています。

このようなメッセージをもらう顧客からすれば、どの企業から届く内容も、ほとんど大差がなくなかなか興味がわきません。

あなたの会社にも毎日大量のダイレクトメールが来ていませんか?その9割はあなたにとって興味の無い内容でしょう。まさにこのあなたのような状況が、あなたのお客さまにも起こっています。

顧客ロイヤリティには「ギブ」と「テイク」のバランスが欠かせない

ここで顧客ロイヤリティについて深く考えてみましょう。

顧客ロイヤリティが高いお客さまは、あなたの会社や製品に信頼や共感しています。顧客の信頼や共感は、「ギブ・アンド・テイク」のバランスが十分であるときに成り立つのではないでしょうか。

つまり、あなたがお客さまに十分な価値を届ける代わりに、顧客は妥当と思える対価を支払っている時に「ギブ・アンド・テイク」が成り立ちます。

見込み客に関して言えば、見込み客が妥当と思える情報やノウハウ、その他見込み客の業務に役立つ情報をギブ(提供)する必要があります。

あなたが、顧客にとって十分な価値を提供していなければ、顧客にロイヤリティを求めても、顧客は応えてくれません。

ビジネスでは、ギブとテイクのバランスが成り立つ時に、対等の関係となってパートナーになります。顧客ロイヤリティを獲得、向上するためには、顧客に十分な価値を提供しなくてはなりません。

顧客ロイヤリティが得られるための条件

真の友情とは、プライバシーを尊重してくれ、精神面でも支えになり、お互いの信頼関係を大事にする関係と言えます。顧客ロイヤリティ向上を狙うなら、企業が顧客にもそのくらいの気持ちで接しなくてはなりません。

顧客ロイヤリティを向上する機会はあちこちにあります。しかし、企業がこのことに気づいていないため、多くの機会を失っているのではないでしょうか。

まずは、あなたが顧客にとって重要なパートナーとなるよう心がけて行動することにあります。つまり、顧客の声を聞きながら、製品の開発の方針を見なおしてみましょう。

先行者利益を得るために、何か新しい技術や機能があれば市場投入をする、いわゆるプロダクト中心の発想では、顧客ロイヤリティは改善しません。

また、顧客が得るメリットを無視して自社の利益中心に考える場合も同じです。このような考え方では、なかなか顧客の真のパートナーとなって、顧客ロイヤリティを獲得できません。

多くの顧客が支持する顧客ロイヤリティが高い企業になるために

顧客ロイヤリティの獲得には、顧客との良好な関係、つまり顧客の信頼や共感が必要不可欠であることは、ここまで何回も述べてきました。

顧客との信頼や共感を得るためには、顧客があなたの製品やサービスの利用の状況を知ることから始まります。利用の状況とは、顧客があなたの製品やサービスを利用しているシーンに含め、利用にいたった背景やビジネス環境にも関係します。

あなたの足が顧客ロイヤリティを稼ぐ

顧客と真のパートナーシップを築いて、顧客ロイヤリティを向上するためには、顧客があなたの製品に満足するだけではものたりません。あなたの製品を利用する環境や事業、業務においても満足してもらう必要があります。

あなたの会社や製品・サービスが市場で勝ち残るためには、製品・サービスと、それを利用する顧客の事業や業務の顧客満足度まで注意を払うべきです。

顧客に関する一連のリサーチは、第三者の市場調査データだけでは不十分ですデータのみかたによって都合の良い答えがみえてきます。

顧客を本当によく知るためには、マーケターが足を使って顧客に接して得た1次情報こそが、確実な顧客の実像をつくります。

顧客ロイヤリティ向上を目指すなら、顧客の話に直接耳を傾けて、実際の顧客の実像を知りましょう。

あなたの会社や組織を顧客ロイヤリティ「工場」にするために

高い顧客ロイヤリティを得て、長期に渡って顧客と良好な関係を構築するためには、顧客のデータを集めて、それを分析し、情報をふるいにかけて新製品や新技術につながるコンセプトを探し出すプロセスに時間かけるべきです。

顧客ロイヤリティ向上のキャンペーン実施のメンバーは、顧客に対して会社の顔であると同時に、顧客のよき理解者であるべきです。つまり、机上の空論ではダメです。顧客は机上や会社の会議室だけではとうてい理解できません。

顧客ロイヤリティ向上キャンペーンのメンバーは、直接に実際の顧客の実像を知り、それを社内に伝達して、しかるべきマーケティング戦略を立案・実行する重要な役割を担っています。

最近では、マーケターの「会社の顔」と「顧客のよき理解者」のバランスが崩れ、随分と「会社の顔」寄りになっているように感じます。これが間違ったマーケティング・キャンペーンになり、顧客から反感を買って、顧客ロイヤリティどころか、あなたの会社・製品・サービスの評判を落とすことにつながりかねません。