ソーシャルメディアの利用が急速に進んでいる。ある調査によれば、2012年現在、5,000万人以上がSNS(ソーシャルメディアサービス)を利用していると報じられた。日本の人口の46%にあたる。前年に比べ利用者数で40%以上の増加だ。
もちろん企業も黙ってはいない。自社製品やサービスの販売促進やブランド構築などのマーケティング媒体として、ソーシャルメディアを注目する企業も少なくない。
企業活動におけるソーシャルメディアの活用状況の調査によれば、すでに4割の企業でソーシャルメディアの導入済みか検討中の段階にある。
業種別でみれば、企業のソーシャルメディアの利用は、BtoBに比べBtoCが先攻する。BtoCで約半数が利用や利用の検討が進むが、BtoCでは約3割程度にとどまる。事実、ソーシャルメディア活用企業トップ100でも、上位にBtoC関連の企業が名を連ねる。
BtoBマーケティングのソーシャルメディアへのアプローチはBtoCと異なる。BtoBマーケティングでのソーシャルメディア活用への道はある。事実、米国では86%のBtoB企業でソーシャルメディアを利用している。
以下、BtoBマーケティングでソーシャルメディアを利用するにあたり認識すべき3つの心構えを紹介する。
1. BtoBマーケティングの特徴を再認識する
BtoBマーケティングの最も大きな特徴は、お客さまの購買行動にある。良く知られたマーケティングのアプローチは通用しない。BtoBビジネスでは営業部門が販売活動の中心となり、自社のビジネスに合わせて組織が構成される。
BtoBのマーケティングの役割は、売上げへの貢献である。BtoBのお客さまの購買行動で言えば営業活動の上流にある。したがって営業部門との密な連携は必要不可欠である。
BtoBマーケティングでは、BtoBビジネス特有の購買行動をよく理解することが重要だ。BtoBビジネスの特徴は以下の3つに収斂される。
- お客さまが課題を認識し、その後案件化するというプロセスがある
- お客さまに選定された業者のみに案件に対する提案を依頼する
- 最終的な購買は、社内で複数人の合議により決定される
(参考:「BtoB購買行動モデルのやさしい解説と教科書が教えない3つの特徴ーカイロスのマーケティングブログ」)
BtoBマーケティングは、BtoBビジネスのこの3つの特徴に基づいた活動を実施する。より多くの売上げをあげるため、より多くの良質の見込み顧客を次々に営業部門に引き渡す活動こそがBtoBマーケティングに求められている。
BtoBのマーケティングでは、より多くのリードを獲得し、その購買意欲を短期間で高め、購買意欲が高いリードを営業部門に引き渡すことが求められている。お客さまの購買行動の段階を認識し、それに合わせたマーケティング活動を展開しなくてはならない。
2. ソーシャルメディアの位置づけを明確に
BtoBマーケティングでは、ソーシャルメディアはどのように活用すべきであろうか?そのヒントは先ほど紹介したBtoBビジネス特有の購買行動にある。
ソーシャルメディアを利用しただけでは、企業は十分な個人情報が得られない。BtoBマーケティングでソーシャルメディアを利用しただけで、営業部門に今すぐ引き渡すべき見込み顧客が次々に見つかるわけではない。
BtoBにおけるソーシャルメディアは、「お客さまが課題を認識し、その後、案件化する」段階で最も効果がある。
ソーシャルメディアは、あなたの会社が伝えたいメッセージを拡散するプラットフォームとしては大いに有効だ。しかし、業種、会社名、役職などのBtoBに必要な情報は、ソーシャルメディアを利用するだけでは取得できない。多くのソーシャルメディアサービス(SNS)ではここまで情報を提供しないからだ。
BtoBマーケティングでは、ソーシャルメディアの利用から、見込み顧客としての情報を得ることが最終的なゴールとなる。リードジェネレーションやインバウンドマーケティングというカテゴリに属する。
見込み顧客として必要な情報が得られたなら、その後リードナーチャリングの過程で営業活動につながるまで十分に購買意欲を高めるBtoBのマーケティング活動を展開する。
3. ソーシャルメディアでは、あなたの会社の「売り物」の宣伝をしない
「お客さまが課題を認識し、案件化していく」段階では、あなたの会社の製品の良さを宣伝しない。また、あなたの会社の戦略を一方的に主張、展開しない。
BtoBにおけるこのアプローチは、「お客さまが課題を認識し、その後、案件化する」段階での常套手段だ。
ある特定の経営課題や社会的問題をとりあげ、お客さまや市場がいますぐ取り組むべきテーマとして注意喚起をうながす。取り上げるテーマは、本来あるべき将来の企業の姿を洞察する時代を先取りしていることが望ましい。
取り上げるテーマに対し、自社のコアコンピタンスや知見、ノウハウを土台として、ユニークかつ他社のまねができない提案・提言やソリューションを示す。
BtoBマーケティングでは、このアプローチは大変有効だ。繰り返しになるが、BtoBの最初の購買行動は、「お客さまが課題を認識し、その後、案件化する」ことである。
あなたの会社の提案・提言やソリューションが、ソーシャルメディアを通じて、多くの人の関心を誘う。さらに、議論を巻き起こし、共感を得ることを通じて、あなたの会社の知名度があがり、そのテーマの第一人者として評判も得る。先見性のある注目度の高いこのテーマの領域で、あなたの会社は優位に展開できる。
課題を認識し、案件化したお客さまは、間違いなくあなたの会社に提案を求めるだろう。
このようなアプローチは、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)と呼ばれている。BtoBマーケティングでは良く知られたアプローチだ。
BtoBマーケティングでソーシャルメディアの利用の目的が、ソートリーダシップであれば、あなたの会社の製品の良さをアピールすることは控えるべきであろう。
BtoBマーケティングでは、ソーシャルメディアを通じて見込み顧客の情報を獲得し、BtoBの購買行動につなげていく必要があるからだ。
さいごに
参考になっただろうか?あなたの会社のBtoBマーケティング活動で、ソーシャルメディアをどのように活用できるだろうか。
多くの会社では、これまでの活動の一部をソーシャルメディアでも行うだけだろう。理解よりもまずは取りかかることからはじめてみよう。