元アップルのCEOのスティーブ・ジョブス氏はみなさんご存知かと思います。
スティーブ・ジョブス氏が著名な理由は、彼の破天荒な人生だけでなく、ビジネスにおけるカリスマ性にもあります。特にアップルに復活してからのステーブ・ジョブス氏の活躍は超人と呼べるレベルでした。
アップル復活後のスティーブ・ジョブス氏は、自社の製品群を有力なもののみに絞り込み、そのコンセプトを変え、人々を魅了し、ブランドを確立し、そして巨大企業を凌ぐ時価総額世界一の会社にまで育てました。
アップルのマーケティング力は世界屈指であり、マーケターとして目を見張るものがたくさんありました。
今日は、アップルとステーブジョブス氏の素晴らしい点を、マーケターが身に付けるべき5つに絞ってご紹介します。
製品マーケティング戦略から学ぶべき3つのこと
マーケターの仕事のひとつに製品マーケティングがあります。製品に関するマーケティングは、マーケティングミックス(4P)のひとつであり、会社の売上に直結するマーケティングの最重要タスクです。
まずはアップルとスティーブジョブス氏から学びたい製品に関する3つからどうぞ。
製品の開発と製造に決して妥協をしない
アップルの製品には、妥協がありません。製品のデザインや機能だけでなく、パッケージのデザインや梱包に至るまで、一切の手抜きがありません。
通常、製品やサービスを企画する立場にあるマーケターは、当然素晴らしい企画を構想します。しかし、製品にかかるコストや納期、製造から販売に至るまで、会社の現実を知っている以上、企画を実際に実行にうつしていく段階で、どうしても妥協せざるおえない問題が浮上します。
そこで妥協をしてしまう、そんな経験ありませんか?アップルの場合はそこが違います。
さて、Macbook Airを例に取ってみましょう。公共の場でパソコンを利用している人は前から見かけましたが、最近ではMacbook Airを持っている人の割合が増えてきました。
ノートパソコン市場においてアップルは、小さな市場シェアに苦戦していました。当然、部品の仕入れ価格や仕様の交渉では、大手のノートパソコンのメーカーに比べて決して有利な状況にはありません。ノートパソコンに搭載する部品の選択肢はあまり多くなかったと考えられます。
もちろんノートパソコンの製造では他社の方が、多くの出荷台数、多くの経験やノウハウがあります。他社はコストを安く、ユーザーのニーズに合わせた新製品を開発できるチャンスがたくさんありました。
しかしアップルは、従来のノートパソコンよりもずっと薄く、軽く、そしてスタイリッシュな製品の開発に成功しました。
素晴らしい製品の開発だけにとどまらず、アップル製品は、電源ケーブルの形状から、梱包される箱まで、妥協無くスタイリッシュさを統一しています。
デザインから開発、製造において、「こんなもんで十分だろう」という発想があれば、このような製品の開発は無理だったに違いありません。
ユーザー体験を徹底的に極める
従来の電子機器市場では、その機能やパフォーマンスにこだわっていました。パソコン関連ならCPUやメモリの量、軽さと価格を比較することで、製品の善し悪しが決まっていました。
このような競争の中で、市場の製品が持つ性能は、市場が求める性能を超えるようになりました。アップルは、まさにイノベーションのジレンマの破壊者の役割を演ています。
参考 イノベーションのジレンマの仕組みを知ろう|カイロスのマーケティングブログ
それだけに留まりません。
アップルは市場ニーズを満たす性能に、「デザイン」という要素を加えました。iPod, iMac, Macbook, iPhone, iPadなど、市場に登場するアップル製品は、そこそこの性能に加えて素晴らしいデザインがあります。
つまり従来の電子機器がファッションと融合しました。
パソコン、携帯、音楽携帯プレーヤーはどれも、以前よりも伸び悩んでいた市場です。どの市場も製品ライフサイクルに照らし合わせれば、成熟期に差し掛かっていました。しかし、アップルはそこそこの性能にファッション性を加味することによって、従来とは少し違うカテゴリーに自分自身を置いて、製品ライフサイクル上を成熟期から、成長期へと逆行してしまいました。
これはブレイクアウェイ・ポジショニングとして知られているアプローチです。
参考 ブレイクアウェイ・ポジショニング|マーケティング用語集
イノベーションのジレンマも、ブレイクアウェイ・ポジショニングも、既存の競合、既存の顧客をじっくり見るだけでは、到底考えつかないアプローチです。想定するターゲットの利用シーン、つまりユーザー体験を徹底的に見極めてこそなせるアプローチです。
顧客から見込み客へ体験を伝播させる
みなさんはアップル製品利用者ですか?
スタイリッシュな個人向けの製品を持つと、なんだか気分が良いですよね。そしてみんなに見せたがります。
このような製品は、見せるだけにとどまらず、その製品の良い所を一生懸命に友達や知り合いに説明する傾向にあります。みなさんも一生懸命説明したり、逆に説明を聞いたりした経験があるでしょう。
知らず知らずのうちに、体験を伝えるエバンジェリストになっています。
そして宣伝でも、誰かに伝えたくなるようなポイントをついています。
プレゼンテーションやコミュニケーションの手法から学ぶ2つのこと
アップルのマーケティングコミュニケーションは世界でトップクラスです。素晴らしい製品を持っているにも関わらず、製品の特徴にフォーカスしないだけでなく、文字もあまり多くありません。
製品の機能について語らない
製品を取り扱う仕事をすると、どうしても製品の機能を全面に出して宣伝したくなります。製品担当のマーケティングをしていると、機能の企画から開発のお手伝いをするので、気付いたら製品の機能ばかり語っています。
しかし、最も表現すべきは、利用者のメリット、つまりバリュープロポジションです。
お客さまや利用者の視点で、
購入するメリット 他の製品との違いが分かる 問題をどのように解決する/ニーズをどのように満たす
を表現したものがバリュープロポジションです。まさに、お客さまがあなたの製品を買う理由がバリューポジションで表現されていなくてはなりません。
参考 良いバリュープロポジションを作る5つのコツ|カイロスのマーケティングブログ
そして、バリュープロポジションは、シンプルかつあいまいな表現が入ると、まだまだ感が残ります。
安心・簡単・快適なノートパソコン。買ったその日から、みんながすぐに楽しめます。
なにかパンチが足りませんね。
薄く、軽く、パワフル。1日の最後までお付き合いします。
これだと、どんな製品かイメージわきますか?
文字や言葉ではなく、絵や写真で語る
ここは実際に説明するよりも、下記の動画を見て下さい。2008年のMacbook Airの発表のシーンです。英語(言葉)が全く理解できなくても、Macbook Airがうまく協調されています。
当時はまさかあんな大きさの封筒にパソコンが入っているなんて想像もつきませんでした。
さいごに|マーケターがスティーブ・ジョブスから学ぶ5つのこと
この記事で紹介した5つは、どれも難しいものではありません。しかし、少しでも気を緩めると、「ついつい」できなくなってしまうことばかりです。不思議ですね。
このような当たり前の事を妥協無くきっちりとやり遂げるのがステーブジョブス氏ではないかと思います。